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2023.08.22

カウンセリングにおけるクライエントの変化と人間関係

index

  1. 1.システム論
  2. 2.ホメオスタシス
  3. 3.視野を広げてみる

1.システム論

 この世の中に存在しているものは、それ自体が単独で存在しているわけではなく、他の何かしらのものとつながりを持ちながら存在しています。たとえば、植物であれば土を通して栄養を吸収したり、太陽光を浴びて光合成を行ったり、あるいは風や鳥、虫などに頼って繁殖していたりします。

 このようなあるものとまた別のものとのつながりの連鎖はシステムと呼ばれています。システムは日本語にすると「系」という言葉になりますが、上で挙げた植物の例は生態系の一部になります。あるシステムと別のシステムは部分的に重なり合っており、それらのシステムはさらに大きなシステムに包含されるというように、システム同士のつながりはより大きなシステムを形成しています。

 人が生きる環境もシステムとして捉えることができます。ある人が結婚すれば家族または夫婦システムが形成されます。2人の場合には家族・夫婦システムは同じものですが、子どもが生まれれば家族システムの中に下位システムとして夫婦、親子システムが形成されます。もう一人子どもが生まれればきょうだいシステムが形成されますし、親子ではなく父-子・母-子システムといように細かく下位システムが形成されるかもしれません。さらに家族やその構成員が属する環境によって、地域コミュニティ、会社、学校などの上位システムが存在します。

 システム論的な見方はマクロな全体としての上位システムとミクロな部分としての下位システムに分けられ、上位システムはさらに大きな上位システムの下位システムとして、下位システムはさらに小さな下位システムの上位システムとして捉えることができます。このようにシステム間の連結が続いていくわけですが、システムとして捉える利点として、各システム間の影響や関係性が整理しやすくなるということが挙げられるのではないかと思います。

 風が吹けば桶屋が儲かる、という諺がありますが、一見なんの関係もなさそうに見えた事柄同士がシステム間のつながりを辿っていくことで関連性や影響力を見つけることができるかもしれません。あまり非現実的なつながりを想定した場合には説得力がなくなってしまうこともあると思いますが、うまく使うことで視野を広げることに役立ってくれるかもしれません。

2.ホメオスタシス

 ホメオスタシスとは生体恒常性と和訳されている言葉で、外的・内的環境に変化があっても生体の状態を一定に保とうとする傾向のことです。たとえば、人は恒温動物なので気温が体温と異なっていたとしても気温と体温が同じになるということはなく、基本的に体温は一定に保たれます。自律神経系、内分泌系、免疫系などが人に備わっている主なホメオスタシス機能です。

 生体には状態を一定に保とうとする先天的な機能が備わっているわけですが、一定に保とうとする傾向は必ずしも生理的な状態だけに限られるわけではありません。個人の思考・感情・行動などの心理的な状態や集団や組織などの社会的な状況であっても一定を保とうとする傾向が認められることがあります。

 個人の状態では習慣化にホメオスタシスが働いているかもしれません。意識的であっても無意識的であっても一度習慣化したものは、たとえ必要がなくなったり失敗につながってしまった場合があってもなかなか止められないものだと思います。たとえば現在スマートフォンの普及率は日本で90%を超えるほどになっています。色々な理由で手放せない人も多いと思いますが、特に必要がなくてもアプリを起動して見てしまい、気づいたら結構な時間が経っていたということがある人もいるのではないでしょうか。そのために寝不足になったり不注意になってしまったりしても止められないということもあるのではないかと思います。

 集団や組織の場合、ルールなどにホメオスタシスが働いていると思います。明示的なルールでも変更の難しいことが少なくないと思いますが、黙示的なルールの場合はより難しくなるように思います。一部のルールを変更しようとすると全体のルールも見直さなければならず進めにくいということもありますし、集団の多くの人がそうしているからという理由で違う行動が取りづらいということもあります。

 ホメオスタシス自体は生理学の分野で提唱された概念ですが、恒常的な性質は人の生理的な状態のみではなく、様々な領域に認められるように思います。一定を保つ傾向は有効に働くこともあれば、改善を妨げることもありますが、人は基本的に保守的な傾向が優勢なのかもしれません。

3.視野を広げてみる

 心理学の分野では家族療法、家族心理学がシステム論を取り入れて広がっていった経緯があります。家族療法では家族全体を対象とするため、必然的にシステム論的な見方をするようになったのだと思います。カウンセリングではクライエントとカウンセラーが1対1で行うことが多いのですが、その場合であってもシステム論的な見方やホメオスタシスという考え方が有用なことがあります。

 カウンセリングを始めようとする時、相談をしようとする人には何かしら困りごと、悩みごとがあり、それが動機となって相談室を訪れることが多いのですが、カウンセリングを進めていくことで原因が明らかになっていき、改善の方法が見つかったとしても、それでもなかなか変化していかないことがあります。このことは改善するための方法が難しいこともあるかもしれませんが、それだけでなくたとえ困っている状況であってもその状態をを保とうする傾向、変化を妨げたり抵抗したりする傾向に取り組む必要があるということを意味しているのかもしれません。抵抗はクライエント個人だけが行っているというより、クライエントとカウンセラーが共同してその状況を作り出していることもあります。

 カウンセリングを進めていくことで抵抗を克服し少しずつ変化が現れたとしても、場合によってはその変化の維持、促進を家族や周囲の人々が妨げてしまうこともあります。システム的に見ると、ある個人の変化は関係する人々に大なり小なり影響を与えます。つまり、クライエントが変化をしていくと、クライエントと関係する人々に変化への適応が求められることになるのですが、そうするとカウンセリングにおけるクライエントと同様に変化への抵抗が現れるかもしれません。

 カウンセリングにおけるシステムのつながりやホメオスタシスの働きは子どものケースを考えてみると分かりやすいかもしれません。

 子どもが問題行動を起こしてカウンセリングに連れられてきました。当初はカウンセリングに取り組む気持ちは薄く、取り付く島もないような感じでしたが、カウンセリングが進んでいくと次第に落ち着いて自分の気持ちを話すことができるようになり、自己理解も進んでいきました。ただ、家庭では相変わらず問題行動が続いており、そうしたギャップについて話し合うために一度親子での面接を行うことになりました。そこでの話し合いでわかったことは、随分前から夫婦の間で不和があり、その後子どもが問題行動を起こすようになったということで、子どもの問題行動に対応しようとしている間は夫婦の協力関係を維持できているということでした。

 この場合、夫婦の不仲が子どもの問題と関係しているのではないかと考えることができると思います。夫婦システムの問題が親子システムの問題を生じさせているわけですが、子どもが問題行動を起こさなくなり親子システムの問題が解消すると、再び夫婦システムの問題に向き合わなければならなくなるため、それを避けるために子どもの問題行動を維持しようとする力が働いているのではないかと推論できます。

 システムのつながりを考慮に入れることで問題が転移している可能性について検討することができるようになりますし、一定を維持する傾向の具体的な内容を推測することができるようになります。こうしたことは子どもだけでなく大人であっても起こり得ますし、家族以外とのつながりの中でも起こり得ます。

 状況が煮詰まってくると、どうしても視野は狭くなりがちです。そうした時にはシステム論的な見方を取り入れることで視野が広がり、問題解決の糸口を見つけることができるかもしれません。

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「文責:川上義之
 臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」

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