趣味と依存
1.流行り・廃り
毎年、色々なものやことが流行っては廃れていきます。流行っている時は熱中していたものでもその熱がひいてしまうと、何が流行っていたのかすら思い出せなくなる場合もあるでしょう。
社会的な流行は大半のものが一過性に生じては廃れていきます。しかし、稀に流行が長期に渡って続き、次第に在って当たり前のものとして定着することがあります。日本文化の中にもそのようにして定着したものがあるかもしれません。
このことは個人の場合でも同じように当てはまると思います。熱中していて四六時中頭から離れなかったものが自分の中のブームが去ってしまうと、何故あんなにハマっていたのか不思議に思うこともありますし、多少熱はひきながらもそれがずっと続いて習慣的なものになると「趣味」とか「ライフワーク」というものになります。
趣味やライフワークをもつことはいくつかの点で心身の健康に役立ってくれます。趣味を行うことで気晴らしやストレス解消など気持ちを落ち着けることが出来ますし、人生を通して行っていくようなライフワークは自分の人生をより豊かなものにしてくれるでしょう。
2.依存の形成
ただ、時にハマり過ぎてしまった場合には生活や人生に破壊的な影響を与えてしまうことがあります。趣味やライフワークなど生活や人生の中にバランスのとれたかたちで取り入れられれば、それは実り多いものになるのですが、ハマった対象に比重が偏り過ぎてしまうと生活や人生を壊してしまうことがあります。
特に問題になりやすいものがギャンブルやお酒、薬物などでしょう。加えて、最近ではスマートフォンなども問題になることがあります。
これらのものは、違法な薬物を除けば、個人の趣味の範疇ですし、それ自体問題にはなりません。スマートフォンについては仕事上での使用やコミュニケーションツールとしてとても便利なものですし、むしろ持っていないという人の方が少ないと思います。
しかし、それらの使い方や用い方が必要性を超えて過剰になり、使用していない時にもそれらのものが頭の中を占めるようになってしまうと通常の生活を送ることが困難になってしまう可能性が高くなります。このような状態は依存と呼ばれます。
依存の例として、お酒、薬物、スマートフォンなどの「物」やギャンブルという「行為」を挙げましたが、他にも買い物(行為)や恋愛(対人関係)など、様々なものが依存の対象になり得ます。
3.ハマる心理
では、何故そこまで強く何かにハマってしまうのでしょうか。依存対象からは色々なものが得られます。嬉しいとか楽しいという感情が喚起されたり、金銭的な利益が得られたりすることもあります。何かにハマることでそのような報酬が得られるから依存するようになるのでしょうか。
しかし、何らかの報酬が得られるのは依存状態にまではならない人も同様に得られているはずですし、逆にお酒を飲み過ぎて健康を害したり、ギャンブルに負けてお金を失ったり、失恋して失望したりすることもあります。それでも依存から抜けられないことが多いです。
依存の背景として、強いストレスや不安が存在すると考えられていますが、それらが一時的なものであれば依存も一過性に消えていくと思います。しかし、ストレスや不安の要因が孤独感や空虚感、自己否定など自己の存在に関係している場合、ストレスや不安は持続的なものになりますし、それらの感覚を打ち消すための依存行動も根深いものになります。
依存の問題点は自分の行動がコントロールできなくなることですが、それだけその個人にとって切実な問題が表れているということだと思います。依存の治療は依存行動を「止め続けること」が重要になりますが、同時に依存という行動に表れている自分自身の問題についても取り組んでいくことが依存を止める続ける上で必要なことだと思います。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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