免疫系に対する心理的な影響
1.免疫とは
人の身体には免疫力が備わっており、免疫がしっかりと働くことで細菌やウィルスの病原菌を攻撃し、人を病気になることから守っています。
ただ、免疫について漠然としたイメージは持っていても免疫がどういった仕組みで働いているかを知らない人は少なくないのではないでしょうか。そこで、まずは免疫の仕組みについてみていきましょう。
免疫は「自然免疫」と「獲得免疫」という2つのシステムから成り立っています。それぞれ独自の特徴をもっており、役割分担をしながら身体の免疫機能として働いています。以下、それぞれについて説明していきます。
1-1.自然免疫
身体に細菌やウィルスなどの病原体が入ってきた時、最初に働き始めるのが自然免疫です。自然免疫は病原体の種類に関係なく、入ってきたものが身体に害を与えると認識するとその対象を攻撃し食べることで、身体が病気になることを防いでいます。
自然免疫はほとんど全ての生物に備わっている自己防衛のためのメカニズムであり、多くの病原体はこの自然免疫によって排除されていますが、中には自然免疫だけでは対処できない病原体もあり、そのような病原体が身体に入ってきた時には次の獲得免疫の出番になります。
自然免疫の役割として、病原体が入ってきた時の初動を担当すると同時に、自然免疫では対処できない場合に、その情報を獲得免疫へ伝える役割も担っています。
1-2.獲得免疫
獲得免疫はその名の通り、自然免疫では対処できない病原体が身体に入ってきて初めて獲得される免疫機能になります。そのような病原体が身体に入ってくると、身体は抗体をつくりだし、それによって特定の抗原(病原体)だけを狙い撃ちできるようになります。このような一度入ってきた病原体を記憶することを免疫記憶と呼びます。
免疫記憶がつくられるためには一度特定の病原体に感染することが必要になります。子どもの頃に麻疹・風疹の予防接種を受けた人もいると思いますが、予防接種は弱毒化させたウィルス(ワクチン)を身体に取り込むことで抗体をつくりだし、麻疹・風疹に対する免疫を獲得するために行うものです。
2.免疫機能と心の状態
免疫機能は身体を病気から守るための重要なメカニズムですが、常に十分な働きができるようになっているわけではなく、心身の状態によってその機能が低下することがあると言われています。
免疫機能が低下すると身体を病気から守る力が弱くなってしまうため、免疫が十分に機能できる状態を維持していることが大事になります。免疫機能を高める方法として、適度な運動、質の良い睡眠、免疫を高めるための食事などが提案されていますが、心理的な面ではストレスとの関連が指摘されており、人の精神状態は自律神経系を通して免疫系に影響を与えています。
自律神経系は交感神経系と副交感神経系があり、活動性の高い状態では交感神経系の働きが、リラックスした状態では副交感神経系の働きが優位になります。通常は交感神経と副交感神経はバランスをとって働いていますが、慢性的なストレス状態にあると交感神経系の働きが優位になりすぎてバランスが崩れてしまいます。この交感神経系の昂進が免疫機能の低下を招いています。
心理面から免疫を十分に機能させるには自律神経の働きのバランスがとれていることが重要になります。活動と休養、緊張と弛緩など、どちらか一方だけではやはりバランスは崩れてしまいます。免疫が心理面の影響だけを受けているわけではありませんが、最近風邪をひきやすいとか体調を崩しやすいと感じた時には、自分の心理的な状態を見直してみるといいかもしれません。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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