人間関係と心身の健康
1.人間関係のストレス
人が生きていくためには他者とつながりをもつことは不可欠なものですが、同時に人間関係に悩んでいるという人も多いのではないでしょうか。
家族、友人、同僚などなど、人間関係が生じる場所は多岐に渡ります。また、家族でありかつ同僚でもあるなど、同じ相手でも場所によって関係の性質が異なる場合もあると思います。その場合、家にいる時と職場にいる時で同じ相手でも関わり方が異なってくるでしょう。
人間関係の悩みのほとんどはその相手とどのように関わるか、あるいは関わらないようにするか、についての悩みだと思います。自分の思いと相手の思いが一致すれば、その関係に悩むことはあまりないと思いますが、一致しなかったとすれば相手との関係が悩みの種になることが多いのではないでしょうか。
人間関係は、自分や相手の思いや性格、相手との関係性、社会常識などの要素が複雑に絡み合っています。自然体で付き合うことができれば、それほど意識することはないかもしれませんが、悩み始めると色々なことが気になってしまい、悩みが深くなるとストレスを感じるようになります。ストレスが大きくなり過ぎれば人間関係そのものを避けるようになってしまう場合もあるでしょう。
人間関係を避けることはストレスの要因から距離を置くことにはなりますが、逆にそれが健康を損なう要因になってしまうことがあります。
2.人間関係の健康への寄与
近年、研究の蓄積によって人とのつながり、社会的なつながりが心身の健康や幸福感などに影響を与えていることが明らかにされてきており、たとえば、認知症の発症リスクと社会的つながりとの関連に関する研究などがあります(国立長寿医療センター,2017)。
では、どのような関係やつながりが健康に対して良い影響をもっているのでしょうか。関係やつながりは2つの側面から評価されます。すなわち、構造的側面(人数、多様性、頻度など)と機能的側面(社会的支援、満足感、孤独感など)です。
構造的側面は関係の量、機能的側面は関係の質と言い換えることができます。健康や幸福感にとって両方が充実していることに越したことはありませんが、関係の質の方がより影響が大きいと言われています。
つまり、良質な関係やつながりを築くことが健康や幸福感にとって重要であるという指摘ですが、それが具体的にどんな関係やつながりか、となると難しい問題です。それは、関係の量は客観的にはかることができますが、関係の質は主観的なものであり、数値化することが困難だからです。
3.丁度よい関係を築く
人間関係や社会的つながりはその性質によって、心身の健康に対してネガティブな影響を与える場合もあれば、ポジティブな影響を与える場合もあることを述べました。
健康のためには良い関係を築き、悪い健康を避けることが大事となります。ただ、当然ですが、良い悪いは人によって判断が異なる可能性がありますし、同じ相手でも良い面と悪い面の両方があるかもしれません。また、現実的に関係を断つことができない場合もあると思います。
ストレスのブログでも述べましたが、ストレスは必ずしも悪いものというわけではありません。もちろん、理不尽なハラスメントには対策が必要ですが、ストレスはそれを乗り越えることが自己の成長につながります。
感覚的な表現になりますが、良い関係、つながりのひとつの在り方は自分と、関わる人々のそれぞれが「丁度よい」とか「適度だ」と感じられる関係だと思います。そのような関係を築くために自分や相手の感じ方や考えをコミュニケーションできることが大事なのではないかと思います。
その時の状況や相手によってはコミュニケーションをとること自体が困難な場合もあると思いますが…。
______________________________________________
前のブログ記事:こだわりの副作用
次のブログ記事:不安・安心と安全
カウンセリングをご希望の方はご予約ページからご連絡ください。
______________________________________________
「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
______________________________________________
新宿・曙橋でカウンセリングルームをお探しなら新宿四谷心理カウンセリングルームへお越しください