思い込みや先入観の影響
1.認知バイアス
人は誰しも先入観や思い込みをもっているものですが、それに気づいていないことも意外と多いのではないかと思います。
自分にとっては当たり前のことで言うまでもないと思っていたことが実は他の人にとっては当たり前のことではなかった、と気づかされた経験がある人もいるのではないでしょうか。
たとえば、私の家では食事中はテレビを点けないルールになっていましたが、友人宅で食事をいただいた時にテレビを見ながら食事をしていて、「テレビ消さないの?」と聞いたら『なんで?』と不思議そうにされたことがありました。
食事中にテレビを見るかどうかは個々人や家庭ごとに違っているはずなのですが、私にとっては食事中にテレビは見ないものという先入観があり、他所で食事をすることが自分の考えの偏りに気づくきっかけになりました。
このような先入観や思い込みによる考えの偏りによって記憶や推論、判断などが影響を受けることを認知バイアスといいます。認知バイアスはその特徴によって、感情バイアス(※)や正常性バイアスなど、様々な認知バイアスが提唱されています。
個人レベルで生じる認知バイアスが多いですが、集団レベルで生じる認知バイアスも報告されています(リスキーシフト、集団浅慮など)。
※感情バイアスについて、認知バイアスの一種と見なす考えと、独立したバイアスと見なす考えがありますが、感情が認知過程に影響を与えるという点では共通しています。
2.認知バイアスに気づく
議論のあるところではありますが、認知バイアスそのものは思考の効率化であり、持っている情報が限られた状況で妥当な予測・判断をするための人がもつ機能であると考えられます。
ただ、持っている情報が限られているために思考の誤りに陥りやすくなりますし、その誤りを訂正することが困難なほど、認知バイアスに固執するようになってしまうのが問題なのだと思います。
逆に言えば、何か問題が起きない限りは認知バイアスを無理に訂正する必要はないのではないかと思います。
上記した例でいえば、食事中はテレビを消すという認知バイアスが自分にしか適用されない場合には何の問題もありませんが、あらゆる人は食事中にテレビを消すべきだ、となってしまうと、他者との間でトラブルを起こしてしまう可能性が高く、その場合は自分の認知バイアスを見直してみる必要があるでしょう。
食事中はテレビを見ないという程度の思い込みであれば、気づくことも訂正することもそれほど難しいことではないかもしれませんが、認知バイアスの中には複雑な過程で生じているものもありますし、感情が強く影響を及ぼしているものもあり、気づくことや訂正することが難しいことも少なくありません。
困りごとの全てが認知バイアスによって引き起こされているわけではありませんが、自分が何か困りごとを抱えている時には、認知バイアスの可能性を考えてみることは有用だと思います。
自分自身を見直してみる時、「これは当たり前のことだ」とか「これは正しいことだ」など強く思っていることがないかどうかを検討してみるといいかもしれません。そのような思い込みが見つかれば、本当に当たり前か、正しいのかと自問してみることで今までと違う考えが浮かんでくることもあると思います。
認知バイアスは言い換えると「個々人が持っている思考の癖」と言えると思います。何かしらの問題が生じない限り癖を直そうと考えないと思いますが、癖を知っておくことは自分で自分をコントロールしていく上で大切なことだと思います。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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