カウンセリングにおける不安の取り扱い
1.一時的な不安と持続的な不安
なんとなく落ち着かない気分になったり、とにかく身体を動かしたい気持ちになったりしたことはあるでしょうか。
そのような感覚になる時は自分でも気づかないような不安感が心の中に生じていることが多いと思います。
人は様々な時に不安を感じます。慣れない場所に居ることや苦手意識を持つものに対して不安を感じることがありますし、嬉しいことや楽しいことをしていてもふと不安を感じることもあります。
不安は日常的なものではありますが、多くの不安はそもそも気づかれなかったり、自分なりに不安解消に取り組むことで通り過ぎていくものです。
しかしながら、不安が強烈であったり継続的なものであったりする場合、その不安解消に取り組もうとするよりも、なんとかしてその不安を感じないように意識的、無意識的に努力や工夫をするようになります。
そのような努力や工夫の中で、たまたまうまくいったいくつかのものが繰り返し行われることでパターン化されていき、条件反射のように同じ行動が為されるようになります。
2.パーソナリティと不安
不安の在り方はパーソナリティ(≒性格)と関係しており、パーソナリティの一部は不安への対処の仕方によって形作られていきます。ある状況で不安を感じるかどうかは人によって異なりますし、不安を感じた時に同じ対処法をとるとは限らないからです。
自分がどんなことに不安を感じるかやその不安に対してどのように対処しているかを知ることは、自分自身の感じ方や考え方、行動傾向などを理解していく上でとても重要なことになります。
自分が何故このように感じ、考え、行動するのか、その理由と不安の在り方が関係しているからです。
自分について分からないことが多い状態では、何かを変えていこうとすることは難しいですが、少しずつ自己理解を深めていくことで変えていった方がいいのか、それとも今のままで構わないのかなどを考えていくことが出来るようになると思います。
3.カウンセリングの中での不安
自分の不安について知ることが重要といっても、不安を感じないようにするために色々な努力や工夫を行っているわけなので、不安を感じる状態をそのまま維持するというのはそう簡単なことではありません。
強い不安は自分を壊してしまうように感じられるからです。
ただ、生活に何らかの支障や困難をもたらす程の不安を感じているということは、今まで使っていた対処法がうまく働かなくなっているということでもあります。そのため、不安を緩和するには新しい対処法を身に付けていく必要があるのですが、それには自分の中の不安をある程度明らかにすることが大事になります。
不安にならないようにするためには不安な状態に自身を置かなければならない、となるので、新しい対処法を身に付けることには困難が伴います。不安が高まるほど以前から馴染んでいる対処法をとってしまいたくなるためです。
カウンセリングでは、クライエントさんが不安を感じている時に、安心できるようにするのではなく、敢えて不安について理解を深めようとすることがあります。それは上記したように自己理解を深めていくためなのですが、それだけではカウンセリングが苦しくなってカウンセリングを行うのが嫌になってしまうと思います。
そのため、カウンセラーはクライエントさんの不安を共有し、共に耐えられるような関係や環境をつくっていくことがとても重要なことになります。カウンセリングの中で何が話されているかということも大切ですが、あるいはそれ以上にどのようにカウンセリングが行われているかが重要になります。
おかしな言い方かもしれませんが、クライエントさんが安心して不安になれるような関係、環境づくりが大事なことだと考えています。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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