自分と他者の境界
1.自他境界のあいまいさ
自分が他者とは異なる、身体的・精神的に独立した存在であるということは通常明確なことであると思います。なんらかの原因によって身体的に結合した状態で生まれてくることもありますが、それは稀なことであり、多くの場合、身体的・精神的に独立した個人として存在しています。
自分と他者が別個の存在であることに対して疑問をもつことは日常的には少ないと思いますが、場合によっては、特に精神的な領域において、自他の境界があいまいになってしまうことがあります。
これは実際に自分と他者が混ざり合っているというわけではなく、そのような錯覚をもってしまうということです。
たとえば、精神的に高揚した状態、あるいは落ち込んだ状態など、平静ではない感情状態の時に多いように思いますが、他者が自分とは異なる考えを表した時に、がっかりしたり怒りを感じたりすることがあります。
そう感じるのは、相手が自分を理解してくれていないと感じるせいかもしれませんが、前提として、言わずとも相手は自分のことをわかっているはずという思いがあるように思います。相手の意識と自分の意識が重なっているように感じているからこそ、そうではないとわかった時に不満を感じるのだと思います。
このように精神的な領域においては、自分と他者の境界があいまいになることは日常的に起こっていると考えられます。
2.自他境界が強固すぎる場合
自他境界の感覚があいまいになることもあれば、逆に自他境界の感覚が強まることもあります。それはたとえば、自分と他者が理解し合えないと感じる時であったり、他者と何も共有できるものがないと感じる時であったりします。
そのような自分と他者の距離に隔たりがあり、何ら共通するものがないと感じている時には自他の境界が強固になっていると考えられます。そのような時には自分が独りぼっちで孤独に存在していると感じられるかもしれません。
自他の境界の感覚が強すぎると、他者と交流する場に居ても孤独感をもつかもしれませんし、他者と交流することを諦めて自分の殻に閉じこもるようになってしまうかもしれません。
3.自他境界を意識してみる
自他の境界の感覚は一定しているわけではなく、その時の自分の状態によって強くなったり弱くなったりしますし、相手によっても異なってくると思います。相手に共感的になっている時には境界は弱まっていると思いますし、誰かと居て不安を感じる時には強まるかもしれません。
また、自他境界の感覚は色々なものに影響を与えています。パーソナルスペースの広さや他者との相性、人との付き合い方など。自他境界の感覚は大抵の場合、無意識的・無自覚的であるように思いますが、意識していないことが案外自分の行動に大きな影響を与えていることがあるものです。
自他境界は常に意識していなければならないものではありませんが、特に他者との関係において悩んでいる時には、自分が相手の境界を、あるいは相手が自分の境界を無造作に踏み越えてしまっていないかどうかを考えてみることが役に立つかもしれません。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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