経験の意味付け
1.経験の意味付け
人は生まれてから様々な経験をします。3~4歳以前のことを覚えている人はなかなかいないかもしれませんが、それ以後の記憶は断片的であっても覚えていることもあるのではないでしょうか。
体験したことは覚えていることもあれば、忘れてしまったこともありますが、覚えていることであっても当時のことがそのまま記憶されているわけではなく、時が経つに従って変化していくことも少なくありません。
旧知の人に会って昔話に花を咲かせていたら、お互いに記憶していたことがまるで違っていた、という経験をしたことのある人もいるのではないでしょうか。
このことは単純に記憶が薄れてしまった結果かもしれませんが、それだけでなく、同じ出来事を体験したとしても視点や理解の仕方が違っていたり、その出来事の経験をどのように意味づけたかが異なっていたりするからかもしれません。
経験の意味付けとはちょっとわかりにくい表現かもしれませんが、その経験が自分にどのような影響があったと考えているかということです。たとえば、『自分が変化するきっかけになった重要な出来事だった』とか『自分とはあまり関係のない些細な出来事だった』などなどと捉えることです。
経験の捉え方は主観的なものなので、自分にとって重要であっても他者にとっては些細なことかもしれません。昔話で齟齬が生まれるのは、記憶違いだけでなく、このような経験の意味付けが異なっているためでもあると思います。
2.経験の意味付けと感情
経験の意味付けは記憶に対して影響を与えますが、記憶に対してだけでなく、その経験に対して生じる感情にも影響を与えます。
『つらい経験』に対して生じる感情と『つらかったが、自分のためになった経験』に対して生じる感情は異なってくるのではないでしょうか。
時間が経つにつれて記憶は変化していきますが、それと同様に経験の意味付けも変化していきます。ただ、自分にとってインパクトのあった経験ほど変化は起こりにくく、したがってその経験に対して生じる感情も変化しにくくなります。
過去の出来事をずっと引きずってしまうのは、その時に生じた感情が変化したり弱まったりすることなく維持されているために、その出来事の経験を自分の中に受け容れることができないせいかもしれません。
そのため経験を受け容れていくには自分の感情を変化させることが必要になりますが、感情は自分の意志とは無関係に生じてくるため、感情が生じないようにするというのはなかなか出来ないものです。
感情を直接変化させることは難しいため、他の道筋を考えることになりますが、その方法のひとつが経験の意味付けについて考えていくことだと思います。
その経験の自分にとっての意味付けが今抱いていること以外にもあるのではないか、異なった捉え方があるのではないか、と考えていくことで、経験の意味付けが変化していく可能性が生まれてくると思いますし、そうすることで感情面の変化が起こり、経験を受容することが可能になっていくのではないかと思います。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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