詐欺被害から身を守る
1.不安と判断力
先日、こんなニュースが流れていました。特殊詐欺被害の防止に関して、心理学の専門家が警察官に講義をしたというニュースです。
・心理学の観点から詐欺被害防止を(※リンク切れ)
(NHK NEWS WEB,2月13日)
近年の詐欺被害の特徴として、たとえば家族のトラブルの話を出して不安を煽ったり、お得な話を出してすぐに決めないと間に合わないと焦らせたりなどの内容が増えているということでした。
いずれの場合でも、不安や焦燥感を高めることでパニック状態にさせ、正常な判断をさせないように意図されているものです。冷静な状態であれば騙されるはずがないと思っていても、パニック状態になって正常な判断力を奪われているために騙されてしまう事例が後を絶たないのだと思います。
一度パニック状態になってしまうと、その状態から冷静な状態に回復するのに時間がかかってしまいます。通常の状況であれば、ゆっくりと落ち着ける時間をつくることで冷静な状態に戻ることもできますが、電話をしている状況では、パニック状態を煽るような話をしてくるために容易ではありません。
そのため、詐欺被害から身を守るためには、パニック状態から回復する方法を考えるのではなく、そもそもパニック状態にならない方法を用意しておくことが重要です。
2.意識を分散させる
ニュースでは、防止効果のあるものとして、電話をしている時に鏡などを用意しておくと防止につながることが紹介されていました。
詐欺を行う者が接触してくる手段としてメールなどの文章を使ったツールもありますが、被害に遭った多くのケースでは、電話や訪問などの手段が多いようです。メールなどでは、返事をするにしても返すまでには時間が必要ですし、怪しいと感じれば相談することもできますが、電話や訪問の場合は、電話口や目の前に相手がいるために考える時間を持つことが難しいからだと思います。
訪問の場合はそもそも家の中に入れないことが大事になると思いますが、電話ではとってしまったら話を聞かざるを得ないかもしれません。
電話からの情報は聴覚的な音声しかないため、相手の声を聞き取ろうとして、音に意識が集中してしまって他のことには意識が向かいにくくなります。だからこそ相手の話に動揺して不安や焦燥感を煽られやすいのだと思います。
上記の鏡を置いておくというのは、鏡を見ることが気持ちを落ち着ける効果があるということでしたが、電話以外のものへ注意を向けるということも効果的なのではないかと思います。
鏡を見ることが苦手であれば、たとえば、TVを見ながら電話をするなども効果的かもしれません。大事なことは電話の声だけに意識が向かわないようにして、相手のペースにはまらないこと、自分が考えられる状況をつくることだと思います。
こんなことで騙されるわけないと思っていても、不安状態が強くなればどんな人であっても多かれ少なかれ判断力は鈍るものです。即決を迫られる場面は特殊詐欺に限りませんし、パニックになりにくい方策持っておくことは大事なことかと思います。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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