自分の欲求との付き合い方・補足
1.欲求が満たされない時
以前のブログ記事”自分の欲求との付き合い方”では、部分的、あるいは異なる形ではあっても自分が抱えている欲求を満たすことが心身の健康にとって重要であることを書きました。
マズローの欲求階層説を基に欲求について説明しましたが、生理的欲求や安全欲求はそれが満たされない場合、生命を維持することができなくなってしまいますし、社会的欲求や承認欲求が満たされない場合、孤独を感じ心理的な健康を損なうことにつながってしまいます。
そのため、欲求をどのように満たしていくかということは生きていく上で考え続けていかなければならないことです。
ただ、当たり前の話ですが、自分が抱いている欲求の全てを満たし続けることは難しい、というより不可能といっていいかもしれません。もちろん、生理的・安全欲求が満たされていることが前提ではありますが、社会的・承認・自己実現の各欲求は十分に満たされないことも少なくないと思います。
自己の欲求満足が挫折した際の反応は様々あると思いますが、今回は
・満足を諦めない
・満足を諦める
・どちらも選べない
という反応について考えてみたいと思います。
2.諦めること、諦めないこと
ある目標(欲求)を達成することに挫折してしまった時、喪失感を抱いたり意欲を失くしてしまったりして、今までのような生活を送ることが困難になってしまうかもしれません。
そこから立ち直っていこうと考えた場合、同じ目標を追求するのか(諦めない)、あるいはまた別の目標を見つけていくのか(諦める)を選ぶことが重要なのではないかと思います。
諦める、諦めないに関して、悩みや葛藤はあるでしょうが、どちらかの選択肢を選ぶことによって、自分の心を目標に向けていくことができますし、目標に取り組んでいくことが心理的に立ち直っていくことに良い影響を与えると思います。
挫折の経験はそれ自体がショックを受ける出来事でもありますし、経験の結果として自己や他者不信に陥ったり、将来的な希望を持つことが難しくなってしまうこともあります。その状態が続いてしまうと生活を送ること自体が億劫になってしまうかもしれません。
元々の目標を追い続けようと思えば、自信を取り戻していくことが大事になりますし、新しい目標を見つける場合には、その新しい目標が納得できるものになることが大事になりますが、いずれの場合であっても目標をもつことが出来事のショックを和らげてていくことに役立つのではないかと思います。
3.囚われている時
挫折の経験は多かれ少なかれ心にダメージを残すものではありますが、諦めないにせよ、諦めるにせよ、自分なりの目標に向かって動いていくことができれば、いずれ挫折を過去の出来事と考えることができるようになりダメージから回復していくと思います。
しかし、諦めない・諦めるのどちらの選択肢も選ぶことができず、満たすことのできない欲求を抱え続けていかなければならないとすれば、挫折の経験はトラウマのように繰り返しショックを与え続けるかもしれません。
このような挫折の経験に心が囚われてしまっている状態では、なかなか立ち直ることは難しいですし、新しい目標を見つけようとすることも簡単ではないと思います。
自分の生き方や価値観に関わるような欲求が挫折してしまった時ほどこのような状態になりやすいと考えられますが、このような場合には目標を再設定する努力と同時に、欲求の自分の人生における位置づけ、挫折体験の意味やそれが自分に与えた影響などを考えていくことが必要なのではないかと思います。
時間のかかることかもしれませんし、挫折体験を繰り返し思い返すことは苦しいことではありますが、考え続けることで自分なりの答えを見つけることができれば、その時から立ち直る過程を進めていけるように思います。
4.挫折の意味を捉えなおす
生きていく上で欲求を満たしていくことはとても重要なことですが、欲求を満たすことができない場合にどのように対応していくかも、同じくらい重要なことです。
それは全ての欲求が常に満たされ続けるということが現実的ではない、ということもありますが、たとえば、安定してお腹が満たされるようになれば、より安全な物を食べたい、人と一緒に食事をとりたい、より美味しい物を食べたいなど、同じ「食べる」ことであっても欲求が広がっていくからでもあります。
以前は欲求を満たすために必要十分の条件だったものが次第に不十分なものに変わっていくとすれば、不満足の状態を経験することは避けられないことでしょう。
挫折しそうだから挑戦しないというのも、自分を守るための手段のひとつだと思いますが、それはそれで欲求不満に陥ってしまう可能性もあります。大事なことは、挫折経験をしないことではなく、そこからいかに立ち直って再び目標をもって生きていくか、ということだと思います。
心が折れてしまった時、挫折経験は誰にとってもありふれたもので、自分を強くする経験、自分の視野を広げる経験、自分を成長させる経験などなどと、挫折経験をポジティブに捉えることができるようになれれば、立ち直るきっかけになるかもしれません。
そう考えられるようになる努力は必要だと思いますが。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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