子どもの発達と親の不安
1.子育ての喜びと不安
生まれたばかりの子どもは当然ながら自分で動き回ることはできませんし、与えてもらわなければ栄養を栄養を摂ることもできません。そんな子どもが、身体が出来上がっていき、新しい事を覚え、自分で出来ることが増えていく。そのような子どもの成長・発達を見ていくことは親としてとても嬉しいことだと思います。
しかし、時に子どもの発達が遅々として進んでいないように感じられたり、他の子と比べて遅れているように感じられて心配になってしまうこともあるかもしれません。
また、自分がちゃんと子どもに関われていないとか育てられていないと感じられて自信を持てないこともあるでしょう。
不安を抱えて自信を持てない状態で子どもに関わっていくことは気持ち的にとても辛いことだと思いますし、不安感の故に余計に自分の子育てがうまくいっていないように感じられて、さらに不安を強くしてしまうこともあります。
多少の不安を感じることは誰にでもあるかもしれませんが、その不安が強くなり過ぎないように子どもの発達に関する知識を学んだり、不安の強化につながってしまうような考え方をしないようにすることが大事だと思います。
2.個人間差と個人内差
子どもの発達に不安を感じてしまう理由のひとつに、自分の子と他の子を比べて、自分の子の出来ないことが多いように見えて不安を感じてしまうということがあります。不安を感じている時には特にそうなりがちですが、これは出来ることよりも出来ないことの方が目についてしまうためであるように思います。
個々人の違いを個人差と言いますが、個人差には個人間差と個人内差があります。
個人間差はAとBを比べた時の違いであり、たとえば足の速さを比べて、Aの方がBよりも速いという場合は個人間差を見ていることになります。
それに対して個人内差は個人の中での得意・不得意を表す言葉です。たとえばBにとって走ることよりも絵を描くことの方が得意・好きなようだという場合は個人内差を見ていることになります。
歩く、話す、表現するなど、発達にはいくつかの領域があります。他の子と比べた時にある領域では子どもの発達が遅れていたとしても他の領域では進んでいるかもしれません。
相対的に子どもの発達の状態を知ることができるという意味で比べることは有用だと思いますが、比べることで不安を感じてしまう場合には、個人間差と個人内差の両方を見て総合的に子どもの発達の状態を捉えていくこと、そしてこの年齢ならばこのような状態でなければならないと考えすぎないことが大事だと思います。
3.自分と子どもを離して考える
子育てに関する不安をケアしていく上で、子どもの発達と親の不安を分けて考えていくことも重要なことだと思います。不安の感じやすさは個人間差のあるもので、同じ状況で不安を感じる人もいれば、不安を感じない人もいますし、子どものこととは関係なく、元々不安を感じやすい傾向のある人もいます。
子どもとの関わりの中では喜びを感じることもありますが、ストレスを感じることもあります。あまりにストレスが大きくなってしまう時には、その全てが子どものせいで生じているように思ってしまうこともあるかもしれません。
ただ、そのような思いが固定してしまうと子どもに対して冷静な見方をすることが難しくなってしまいますし、親子の一方が感情的になっていると他方も感情的になりやすくなることもあります。
子どもとの関わりにおいて感情的にならないことは困難ですし、常に冷静に接することが良いことだとも限らないと思いますが、感情的な接し方の一辺倒になってしまうと、それはそれで誰にとってもしんどい状況になってしまいます。
そのため、子育ての中で不安や苛立ちを感じた時は、「この不安や苛立ちが必ずしも子どものせいで起こっているわけではない」という考え方を持っておくことは、自分の感情の動きを冷静に眺めるために役に立つのではないかと思います。
4.一人で抱えない
親として子どもに関わっていく上で、親が自分の不安やストレスをケアしていくことはとても重要なことです。過度な不安やストレスを抱えたままでいることは、それ自体とても辛いことですし、親子の関わりに対してもネガティブな影響を持つことが多いと思います。
親子は密な関係になりやすいからこそ、時に子どもとも自分の感情とも距離を置くことが必要になると思いますし、そのために知識や考え方の幅を広げていくことが役に立つと思います。
ただ、子育てと日々の生活をこなしながら自分自身のケアも行っていくことを一人で全てを十分にやっていくというのはなかなか難しいかもしれません。そのような時は誰かに相談してみることがやはり良いと思います。
相談したとしてもすぐに困りごとが解決することは稀ですし、捉えようによってはやることが増えてしまうというふうにも考えられますが、問題を一人で抱えて悩まないことはメンタルケアの上でも子育てをしていく上でも大事なことだと思います。
子育ては長く続くものなので、ひとつの問題が解決してもまた別の問題が起こってくるものだと思います。問題は常に抱え続けているものだと思いますし、不安やストレスと無縁になるということはほとんどないと思います。だからこそ一人で抱えないことが子どもと関わっていく上で重要なことでしょう。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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