親役割とプライバシー
1.育児への傾注
子どもの誕生は実生活上でも精神生活上でも大きな変化です。家族が増えることによって、それまでの夫婦2人での生活から夫婦と子供3人での生活となり、夫婦関係に加えて親子関係が新たに生まれてきます。
また、子どもが小さい間は特に、育児へ注力する時間や労力は大きなものですし、相対的に自分や配偶者の私的な事柄にかけられる時間・労力は少なくなります。
妊娠がわかってからそのような変化に対する心構えは始まっていくと思いますが、実際に子どもが誕生すると想像と現実のギャップは少なからずあると思いますし、変化への適応と育児の両方を同時に行っていくことはなかなか大変なことです。
適応と育児は並行して進んでいくものだと思いますが、育児が特に大変な時にはどうしても育児にかかりきりにならざるを得ませんし、そうすると自分のことは後回しになりがちです。
親の育児への没頭は子どもが成長していく上で必要な過程だと思いますし、後回しにされていたとしても後から自分に対する世話をする時間を持てれば問題はありませんが、自分のことがなおざりになったままになってしまうと後々メンタル面や生活上の問題が現れてくることがあります。
2.自分のプライバシーを大事にすること
子どもが成長していく上で親が育児に注力していくことは重要なことですし、それがあることで親子の愛着関係は育まれていくのだと思われますが、子どものいる人には親としての側面だけでなく、個人としての側面もあり、親としての側面だけを見てしまうことは個人としての生活を軽視することにつながってしまうかもしれません。
人は常に何かしらの望み、欲求を抱えて生きています。親としての望みもあれば個人としての望みもあります。抱えている欲求が全て叶うわけではありませんし、先延ばしにしなければならないことも少なくありませんが、自分の欲求に気づいてそれに対処していくことは健康な生活を維持していく上で重要なことと思います。
親としての望みと個人としての望みが一致していて、育児をしていくことで個人的な欲求が十分に満たされているとすれば、親と個人の欲求を分けて考える必要はないかもしれません。ただ、両者が必ずしも一致しているとは限りませんし、無理に一致させなければならないというものでもないと思います。
場合によっては、親、そして個人としての欲求が一致してしまうことで子どもの成長の流れに沿わなくなってしまうこともあるかもしれません。そう考えるとやはり親としての欲求と個人としての欲求は分けて考えた方が良いように思います。
一致、不一致について考えるよりも、親役割を離れたところで自分がこうしたとかあれしたいという個人的な望みについて気づき、そういった欲求を満たすのか延期するのかなどを考えていく。育児を行っていくことと並んで、自分のプライバシーを確保していくことが自身や家族の健康や成長のために重要なのではないかと思います。
3.バランスをとっていく
家族関係はその中に複数の関係を含んでいるものです。最初は夫婦関係のみでも、子どもが生まれれば親子関係が生じます。さらに子どもが増えればきょうだい関係も生じますし、親が同居していれば自分の親との親子関係もあります。そのような複雑な人間関係の中で何かひとつの関係だけに注力していくのは不自然なのではないかと思います。
もちろん、子どもが小さければ小さいほど子どもだけに注力しなければならない時期はありますし、そのような時期に子どもから離れることは難しいと思います。ただ、自分のことは置いておいて子どものことだけをずっと考えていくということもやはり難しいのではないかと思います。
時期によって割合は変化していくと思いますが、子どもについて考えることと自分について考えることのバランスをとっていくことが重要なのだと思います。たとえば、子どもが乳幼児の頃は目を離せなくとも、保育園や学校に行くようになれば自分の時間が多少増えるかもしれません。
その時々で自分のプライバシーがどれくらい確保できるかは変わってきますが、プライバシーを確保すること自体は子どもがどんな時期にあったとしても必要なことだと思います。
自分のプライバシーを確保することは、回って家族のプライバシーを確保することにもつながりますし、プライバシーを確保することが健康の維持に役立つとするなら、自分の健康を維持することが家族の健康を維持することにもつながるのではないかと思います。
役割とプライバシーについては、自分の中で、そして自分と家族の間でバランスをとっていくことが重要なのだと思います。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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