メタヴァースな生活
1.メタヴァース?
メタヴァース、と言われてもそれが何かパッと思い浮かぶ人はまだ少ないかもしれません。言葉自体は十数年前からあったようなのですが、メディアなどで見かけるようになったのは昨年くらいからだったと思います。
wikipediaによると、メタヴァースとは、
『コンピュータやコンピュータネットワークの中に構築された現実世界とは異なる3次元の仮想空間やそのサービスのことを指す』
ということでした。
仮想空間を使ったサービスというと、今まではテレビゲームやSNSなどのコミュニティが主だったものかと思います。あるいはネットショッピングなども一種のメタヴァースかもしれません。それらは現在でも新しいサービスが続々と誕生していますが、今注目されているのは教育や医療、あるいは企業向けのサービスです。
VR(irtual Reality:仮想現実)やAR(Augmented Reality:拡張現実)を使ったサービスは、今まではエンターテインメント領域が主だったものでしたが、技術の発展や機器の低価格化によってより身近なものになっていくのかもしれません。
どのような活用例が想定されているのか、いくつか見てみましょう。
2.活用例
情報処理端末として、今やスマートフォンを持っていない人の方が少なくなっていますし、人によってはスマホとタブレット、スマホ2台というように複数台の端末を持っている人もいます。小中学校でもPCの設置だけでなく1人1台タブレットを貸与する計画も進められています。
現状、VRはサービスを受けるためには専用の機器を揃える必要がありますが、ARについては、数年前の『Pokemon GO』がヒットしたように、スマホを持っていれば受けられるサービスも存在します。
VRも今後の技術展開次第では、より手軽に利用できるようになるかもしれません。
現状では構想段階にあるものですが、各領域においてメタヴァースの活用がどのように想定されている挙げてみます。
2ー1.教育分野
教育におけるメタヴァースの活用例として、ひとつは個別学習に活用していくことが考えられているようです。
学習における動画の利用は現在でも行われていますが、一人一台端末を持っていれば、一人ひとりが自分の進捗に応じて異なる動画を参照することもできますし、個別学習と集団学習を組み合わせることがより進めやすくなるかもしれません。
また、別の活用法として、不登校やひきこもり支援に活用していくことも挙げられています。仮想空間上で社会参加や登校のシミュレーションを行うことで、現実の社会参加や登校への波及効果が期待できるのではないかと思います。
2-2.医療分野
医療分野では、手術におけるAR技術の適用が進められているようです。AR端末に手術に必要な情報を瞬時に表示させることで、手術工数や時間の効率化が図られ、患者・医療者双方の負担軽減にもつながっているようです。
手術におけるARの利用は、トレーニングでの利用に限られていたようですが、画像技術や通信技術の進歩によって実践にも耐えうるようになってきたのだと思います。
また、薬剤の研究開発にもVRの技術が活用されているようです。従来は二次元上で行われてきた分子構造の分析やデザインを三次元上で行うことが可能になり、創薬期間・コストの大幅な短縮・削減につながると言われているようです。
新型コロナウィルスのワクチンが従来と比べて短期間に開発されたことは、もしかしたらこのような技術の活用が関係しているのかもしれません。
2-3.ビジネス分野
ビジネス、あるいは社会一般に向けて、ということになるかもしれませんが、この分野における活用法としては、主にコミュニケーションにおける活用が考えられているようです。
仮想空間を利用する利点のひとつとしては、それぞれの人が遠隔地にいる状況であったとして仮想空間上ではまるですぐ近くにいるように体験できることが挙げられます。これによって、たとえば日本と海外に離れていたとしてもひとつの体験を同時に受けることが可能になります。
ビジネスにおいては、たとえば職員研修を行う際に、各地で同じ研修内容を何度も行うのではなく、仮想空間上で一度に行うことが可能になります。また、職員同士の交流や協力などもよりやりやすくなるかもしれません。
コミュニケーションにおいては、ビデオ通話であってもXR(VR/AR)であっても視覚と聴覚に限定されていることに現状では違いはありませんが、人工皮膚の開発によって皮膚感覚をシミュレートし再現する研究も進められているようです。
3.体験の変化
上に取り上げた以外にもメタヴァース活用の事例はいくつもあると思いますが、きりがなくなりそうなので、このあたりにしておきます。
メタヴァースの活用がさらに広がっていくためには、さらなる研究開発やインフラの拡充が必須のものとなりますし、サービスを提供する側、享受する側双方の意識の変化も必要になるかもしれません。
ただ、この度の感染症の広がりによって社会的な交流や活動が大きな影響を被ることが明らかになったこともあり、遠隔地にいながらサービスが受けられるようになる仕組みづくりはこれからも次第に進めれていくことは間違いないように思います。
仮想空間を活用したサービスが広がっていくことは、人の体験の様式や発達の仕方にも大小さまざまな影響を及ぼすかもしれません。人工皮膚の開発が進んでいることは上記しましたが、少なくともそれだけで仮想空間上の体験と物理空間上の体験が同一になるとは思えないですし、そうなると体験の質にも違いが生じるだろうと思うからです。
なんにせよ、メタヴァースの活用が広がることによって、それが人にどんな影響を及ぼすのかは実際に広がってみないとわからないところですが、少なくとも近い将来に生活の大半が仮想空間上に置き換わるということはないように思います。
それはインフラ整備の問題もありますが、たとえ非効率であったとしても、人は物理空間上での他者との交流を望むものではないかと思うからです。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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