睡眠と記憶
1.睡眠は大事
ブログでも繰り返し述べていることですが、睡眠は生命活動や健康の維持にとってとても重要なものです。疲労回復やホルモンバランスの調整、生活習慣病の予防などなど、心身の状態を保っていくために必要な機能が睡眠には備わっています。
睡眠不足が続いてくると、疲れやすさを感じたり些細なことでもイライラしてしまったりなど身体面・心理面で調子の悪さが現れてきますし、脳の働きが鈍ってぼんやりしやすくなるため、注意が散漫になり集中することが困難にもなります。
そのような状態になってしまうと、心身の健康だけでなく社会生活を営んでいくことも難しくなってしまいます。それを回避するためには十分な睡眠の質と時間を確保することが重要になります。
ただ、心身の状態は日々変化するものですし、何かしらの理由によって睡眠状態が悪くなってしまうことがあります。メンタル面の症状でいえばうつ気分や不安などで睡眠がとりづらい状態になることがあります。
不眠が一時的なものであればそれほど気にすることもないですが、続くようであれば生活リズムや食生活の見直し、ストレス対策、睡眠環境の改善など試してみて、それでも改善がみられないようであれば医療機関への受診を検討してみることも必要かもしれません。
不眠が長引いてしまうと、心身の健康への影響は大きいですし、活動のパフォーマンスも低下してしまうため早いうちに出来る対策を講じていくことが重要です。
2.睡眠と記憶
さて、心身の健康にとって睡眠の役割はとても大きいものがありますが、睡眠の役割はそれだけではありません。
睡眠時には記憶の再生が起こっており、その一部がおそらく夢として記憶に残るのだと思われますが、その記憶の再生が記憶の定着と関連していることが明らかになってきています。
記憶の中でもエピソード記憶と呼ばれているものは、「誰が、いつ、どこで、何をしたか」という内容で構成されています。人・時間・場所・行為の記憶が睡眠時に再生され定着することで覚醒時に思い出しやすくなるのだと思います。
記憶の定着が睡眠時だけに起こるかというと、そうとも限らないとは思いますが、眠らないことは不可能ですし、覚醒時の経験・学習が睡眠によって記憶としてより定着すると考えることが妥当なように思います。
いずれにしても、経験したことや学習した内容をしっかりと定着させていくためにも睡眠は重要なものになります。たとえば、勉強した内容がなかなか頭に入ってこないという時には勉強の仕方だけでなく、睡眠の状態も併せて考えていくと、より効率的に学習を進めることができると思います。
3.夢について考える
人は経験したことの全てを意識的に思い出せるわけではありません。たとえば、見えている範囲のもので焦点が合っている部分については比較的思い出しやすいですが、焦点の外側の部分については思い出すことは難しいものです。
しかし、そのような思い出せない部分についても記憶としては蓄積されていますし、思い出せない部分も睡眠時には再生されていると思われます。
記憶の定着に個人差があります。それは脳の機能的な差異なのかもしれませんし、注意集中や興味関心、性格傾向などの心理的な差異なのかもしれません。そのような差異が睡眠時の記憶の再生にも現れているとすれば、夢について考えることは自己の特徴を知るためのヒントになると思います。
夢の内容には、今日起こったことだけでなく、過去に起こったことも含まれていますし、起こった事実がそのまま現れているだけでなく、自身の想像、望んだことや望まないことも現れているかもしれません。
様々な要素がごっちゃになって現れてくるため、夢の内容を考えていくことは簡単ではありませんが、自分が無意識的になっているものについて知ったり理解したりするために夢は有用なものかもしれません。
もちろん、夢の内容によっては強い不安を喚起するようなものもありますし、それによって眠ること自体に不安を感じるようになってしまうこともあります。その場合は夢の内容について考えるよりも、まずは不安を和らげていくことが必要になりますし、あるいは夢にはそもそも触れない方がいいこともあるかもしれません。
その時々によって自分の必要なものは変わっていくものですし、自己について理解を深める方法はいくつもあります。夢だけが自己の無意識的なものを知る方法ではありませんが、方法のひとつとして覚えておくと役に立つこともあるのではないでしょうか。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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