コロナ対策を緩和・撤廃していく際に重要と思うことについて
1.久しぶりに制限のないGW
今年は平日に挟まった連休になりましたが、3年ぶりにコロナに対する制限のないゴールデンウイークだったこともあって、全国の行楽地では多くの人出がありました。晴れた日が続いて気温が高かったこともあり、南の方では海水浴を楽しむ人たちもいたようです。
連休の人出によってコロナの感染者数がどのように推移するかは、これからデータが出てくるとは思いますが、現状では全国の感染者数は低下傾向にありますし、病床使用率も自治体によって差はありますが、全国平均では20%強で逼迫した状況にはないようです。
新型コロナ専用の治療薬はまだ実用化されてはいませんが、医療において治療のノウハウが蓄積されてきたことやワクチンの効果、感染しても重症化しにくくなったことなどが病床使用率の低下に表れているのかもしれません。
今後も手洗いや消毒、マスクの着用といった感染症対策は続けられていくと思いますが、緊急事態宣言や蔓延防止措置などの大きな対策が取られることは余程の状況でなければないように思いますし、以前とは違った形であっても社会が平常な状態に近づいていることが感じられます。
2.海外の状況
今年のゴールデンウイークは日本から海外に出た方も大勢いたようです。日本も含めて一部の国・地域では出入国に強めの規制がかかっているところもありますが、規制を緩めたり撤廃したりする国・地域も増えているようです。
規制の設け方については、コロナが社会に与える影響をどの程度と見積もっているかにもよると思いますが、そこに住む人々の価値観や社会文化的な背景にも大きく左右されるように思います。
個人的に印象に残っていることとしては、特に欧米の人々のマスクを着けることに対する拒否感が強かったことです。マスクが義務化されたことに対して訴訟なども起こされていました。
このことは個人の権利に対する考え方の違いなども関係しているかもしれませんが、受け取る感覚的な違いもあるかもしれません。私が聞いたのはイギリスの話ですが、マスクを着けると顔が見えにくくなり、表情が見えないことに不安を感じるのではないか、ということでした。
コロナ禍のような世界中を巻き込む問題であっても、その対策は合理的・論理的な観点からのみ計画が立てられるわけではなく、心理社会的な要因によっても左右されるものなのだと思います。
3.それぞれに合った取り組み方
規制緩和や撤廃を進めている国・地域に比べると、日本の場合、その進め方は緩やかであるように思います。
このことは日本では感染・発症のリスクを強く意識していることや状況を変化させることに対して慎重になっているということの表れかもしれません。
対策や対応方法にその主体の独自性が表れるとすれば、緩やかな進め方は日本的価値観や文化的背景をもった集団の特徴なのだと思いますし、おそらくこのような進め方が日本人には合っているのだと思います。
ただ、集団を構成する人々全てが同じ価値観や考えをもっているわけではありませんし、集団が行う対策に合わない人もいるはずです。緩やかなに進めるよりは迅速に進めてほしい人もいるかもしれません。
考え方の異なる人同士が同じ集団内にいる場合、そこで葛藤が生じるわけですが、どちらのやり方が良いのか、という考え方になってしまうと葛藤の解消は難しくなりやすいです。たとえば、コロナウィルスの危険性を強く感じている人と大したことないと感じている人がいて、どちらが良い、正しいという話になっても言い合いにしかならないかもしれません。
もちろん、場合によっては集団の意思が個人に優先することはあると思いますし、個人が集団から離れなければならなくなることもあると思います。ただ、結果としてそうなったとしても可能な限り葛藤を解決しようとする機会はつくった方がいいのではないかと思います。
そのような機会をつくっていくことが集団や個人が成長していくことにつながっていくと思います。
4.自他の考えをすり合わせる
話はコロナから少し逸れてしまいましたが、今後、日本でもさらなる規制緩和や撤廃が進められていくと思います。それは国が行う規制だけでなく、集団が個人が行っている対応策も同様だと思います。
ただ、どの程度のスピードで緩和を進めていくか、どのような条件が整えば撤廃できるかなどは議論のあるところだと思いますし、議論が行き詰まって緩和・撤廃が停滞してしまうこともあるかもしれません。
時間が無限にあるわけでないので、いつまでも議論や検討をしているわけにもいきませんが、必要に応じて自分なりの考えを人に説明できるようにしておくことは大事なことだと思います。
問題があればそれに対処する、という点では、規制や対策をつくっていく時の方が認識の共有はしやすいように思います。反対に規制や緩和・撤廃する時にはそれぞれの考えの違いが目立ちやすいかもしれません。そのため対策を規制や対策を緩和・撤廃させていく時こそ、物事をうまく運ぶためには自分や他者(集団も含めて)の認識や考えを明確にしておくことが重要と思います。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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