睡眠に大事なことは心身のリラックスと生活リズム
1.睡眠に悩む人は多い?
ブログでも何度か睡眠について書いていますが、心身の健康を維持していく上で睡眠はとても重要なものです。疲労状態からの回復やストレスの緩和、ホルモンバランスの調整などに睡眠は関わっていますし、また夢を見ることは学習や経験の記憶の定着と関連しています。
十分な睡眠時間と質の良い睡眠をとっていくことで身体と心が健康な状態を保っていくことができますが、ただ人の健康状況に波があるように睡眠状況にも波があります。
極度の疲労や過度なストレスによって睡眠状態が悪化してしまうのはもちろんですが、そういったことがなくとも心身の状態や生活環境の些細な変化によっても時に眠れない日があったりもします。
少し前から話題になっていましたが、Yakult1000という商品が睡眠状況を改善するということで、一時的に販売中止になるほど人気を博しているようです。
ストレス緩和 睡眠の質向上 Yakult1000/Y1000
(Yakult1000の商品ページです)
ホームページではYakult1000についてストレス緩和や睡眠の質の改善に関する効果研究のデータがいくつか開示されていましたが、自律神経系のうち副交感神経の働きを高めることによってリラックスした状態に導き、そのことが体感ストレスの緩和、深い眠りや目覚めの良さにつながっているということでした。
現代はストレス社会と言われていますが、このような商品が爆発的に売れるということは、やはりストレスや睡眠のことで悩んでいる人は多いということなのでしょう。
2.リラックスだけでは難しい場合
睡眠をとる時には副交感神経の働きが優位な状態、リラックスした状態になっていることが重要です。Yakult1000に限らず、自分なりのリラックスできる方法を取り入れることでより質の良い睡眠をとりやすくなります。
ただ、たまに眠れない日があるくらいであれば、リラックスする方法を取り入れることで睡眠が改善するかもしれませんが、不眠状態が続いてしまっている場合には一時的なストレスの緩和等では睡眠を改善していくことは難しいかもしれません。
リラックスするための方法はあくまで睡眠の質を高めるための補助的な方法なので、寝たいときに眠れるようになるわけではありませんし、不眠状態そのものを治す方法とは異なっているからです。
不眠状態が慢性的になってしまっている時には、場合によって医療機関に相談することが大事になるかもしれませんし、過度のストレスによって睡眠が妨げられているとすれば、そのストレス要因に対処していくことが必要です。
また、不眠状態が続くと生活リズムが乱れてしまうことが多いので、必要に応じて医学的治療やストレス対処を行いつつ、生活リズムを整えていくことも不眠状態の改善には有効だと思います。生活リズムを整えることは日常的に行えることなので手を付けやすいことかもしれません。
3.概日リズムと睡眠覚醒リズム
人が示す生活リズムのひとつに概日リズムというものがあります。自律神経やホルモン分泌は1日中ずっと同じ働きをしているわけではなく、強くなったり弱くなったり、あるいは別の働きをしたりと、ある周期をもって働きが変動しています。その周期を概日リズムといいますが、ヒトの場合には概ね25時間周期のリズムをもっています。ただ、そのままでは地球の1日である24時間とズレてしまうため、日光を浴びることで24時間周期に同調させています。
陽の光を浴びることで身体のリズムを24時間周期に合わせている、という話は聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。
通常この概日リズムと睡眠覚醒リズムは一致していることがほとんどなのですが、何らかの要因によって睡眠覚醒リズムが乱れてしまうと、概日リズムと睡眠覚醒のリズムが不一致の状態になってしまいます。そうなると生理的には眠る/起きる状態になっているのに睡眠覚醒のリズムがズレているために、入眠困難や浅眠、覚醒時にすっきりしないなど、睡眠の状態が悪化してしまいます。
そのためしっかりとした睡眠をとるためには、概日リズムと睡眠覚醒リズムを一致させていくことが大切になります。概日リズムについては朝方の日光を浴びることで24時間周期の昼夜変化に同調させることができますが、では睡眠覚醒リズムを24時間周期に同調させていくにはどんな行動が有効なのでしょうか。
4.決まった時間に食事をとることの重要性
概日リズムと睡眠覚醒リズムを揃える方法としては、たとえば、1日単位で生活スケジュールを組み、厳密にそのスケジュールに沿って生活することで24時間周期の睡眠覚醒リズムをつくることで、概日リズムと同期させることができると思いますが、多くの人はそこまで厳密なスケジュールを組んで生活しているということはないように思います。
それでも多くの人は24時間周期の睡眠覚醒リズムで生活をしており、そのことに違和感を覚える人はあまりいないのではないかと思います。
この睡眠覚醒リズムの24時間周期への同調について食事が大きな役割を担っていることを証明した研究が発表されていました。
食事時刻が睡眠覚醒リズムを調節
(北海道大学プレスリリース)
この研究では、時間の確認ができない環境下で生活する被験者を、定刻に食事を摂る群と時間は決めず自由に食事を摂る群に分けて、睡眠覚醒リズム等を指標に両者の比較を行いました。その結果、定刻に食事を摂った群では多くの被験者が24時間と区別できない睡眠覚醒リズムの周期を示す一方で、自由に食事を摂った群の被験者はほとんどが24時間よりも長い周期を示したということでした。
現在時刻を知る手掛かりがないという特殊な条件下での結果ではありますが、実験結果は決まった時間に食事を摂ることが24時間周期の睡眠覚醒リズムを維持していく上でとても重要な要因であることを示唆しています。
朝方の陽の光を浴びることで概日リズムを、そして定刻に食事を摂ることで睡眠覚醒リズムを24時間周期に同調させることができ、概日リズムと睡眠覚醒リズムの周期が揃うことによって、生活リズムが整っていき、より質の高い睡眠がとりやすくなるのではないかと思います。
睡眠に悩んでいる場合には、食生活の見直しも含めて考えていくことで、改善していくための手掛かりが得られるかもしれません。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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