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2023.01.24

周産期におけるメンタルヘルス ~本人支援と家族支援~

index

  1. 1.周産期の心理的な支援
  2. 2.産後の自殺企図のリスク因子
  3. 3.家族支援と環境づくり

1.周産期の心理的な支援

 先月になりますが、2022年1月~10月の出生数が発表されていました。その期間に生まれた子どもの人数ですが、67万人弱となっていて、年間通しての出生数は80万人を割り込む見込みということのようです。日本の出生数は減少傾向にあり、それには社会状況や経済状況、価値観などが関係していると思います。子どもをもたない選択をしたなら、その選択は尊重されるべきと考えていますが、子どもをもつことや多子出産を諦めざるを得ない人が増えているすれば、やはり少子化対策や子育て支援は重要と思います。

 具体的にどんな支援が必要かは議論のあるところかと思いますが、現状では子どもが生まれた後の家族に対する支援が主なものになっているように思います。育児は多大なエネルギーを要することなので子どもを含めた家族への支援に重点が置かれることは重要なことですが、一昨年に不妊治療に保険適用が可能になったり結婚を促進するような体制づくりについての議論など、子どもが生まれる前の段階に今後支援の幅は広がっていくかもしれません。

 (結婚)→ 妊娠 → 出産 → 育児 というプロセス全体に対する支援が構想されているようですが、意外と盲点になっているのは出産の前後、周産期の母親や家族に対する支援ではないかと思います。もちろん、医療を中心に身体的なケアは継続的に行われていると思いますが、妊娠している本人とその家族の心理面に対する支援という観点が外れがちになっているように思われます。

 出産後のマタニティブルーや産後うつという言葉はよく知られていると思いますが、産前産後はホルモンバランスの変化が大きく、食事や睡眠、精神状態など不安定になりやすい時期です。それらが不安定になると生活状況が乱れやすくなりますし、場合によっては家族とのちょっとした諍いも増えるかもしれません。そうするとさらに気持ちが不安定になってしまうような悪循環になってしまうこともあります。

 周産期における妊婦とその家族に対する心理的な支援は、その後に安定した状態で育児をしていくためにも重要になるのではないかと思います。

2.産後の自殺企図のリスク因子

 出産前後は心身の変化が大きく精神的にも不安定になりやすい時期です。医療の発展によって出産時の死亡はかなり低下しましたが、現代では産後の自殺が問題になってきています。統計データは見つけられなかったのですが、妊産婦の死亡の20%ほどが自殺と推定されているようです。

 産後の自殺企図の要因は出産自体がその要因になっているというよりは、出産前から抱えていたリスク要因のために出産前後の状況が重なって企図に至ったと考えられます。では、どんな要因が自殺企図のリスクを高める要因となるのでしょうか。

産後の自殺企図のリスク因子はうつ病だけではない 日本全国のDPCデータから見えた周産期における自殺企図の様々なリスク因子
(東北大学プレスリリース)

 産婦の自殺企図リスクについて考える場合、産後の状態だけではなく産前の状態も考慮することが必要です。上記の研究では、疫学、既往歴、生活歴などから網羅的にデータを収集、分析してリスク因子を検証しています。

 自殺との関連でいうとやはりうつ病が関係が強いようなイメージがありますが、今回の研究では、産前のアルコール・たばこの使用障害、統合失調症、パーソナリティ障害、不安障害の既往がうつ病の既往以上に自殺企図のリスクを高める可能性があることがわかりました。また、出産時の年齢で比較すると、年齢が低い方がややリスクが高いという結果でした。

 今回の研究でリスクを高める因子と判定された精神疾患では、情緒状態の浮き沈みが大きいことが共通しているように思います。うつ病が自殺企図のリスクを高めることは間違いないですが、単極性障害(うつ病)に比べて双極性障害(躁うつ病)の方が自殺企図率が高いという報告もあります。うつ病は悲観的な気分状態が続いている状態ですが、低調な状態で安定しているとも言えます。うつ病でも改善が見られたタイミングで自殺に至るケースがあるので、気分状態間のギャップの大きさや変化の頻度がリスクと関係しているのかもしれません。

 また、外的刺激に反応しやすいという共通点もあるかもしれません。うつ病の場合、悲観的な見方によって悲観的に気分になるというように意識が内面に向きやすいのですが、研究で見いだされたリスク因子の精神疾患は外的な刺激によって依存や被害感、不安などが強められて精神的に不安定になりやすい特徴があります。外的刺激には対人関係も含まれますが、精神的に不安定な状態は対人関係の不安定さを招きやすく、そのために支援リソースを有効に利用することが出来ず、孤立してしまいリスクを高める結果になってしまうのかもしれません。

3.家族支援と環境づくり

 妊娠期間中はホルモンバランスや身体の変化によって精神的に不安定になりやすく、そのため妊婦本人に対する心理的なケアはとても重要になります。ただ、ケアや支援があればずっと安定した状態でいられるかというと、それは難しいように思います。変化は妊娠に伴って起こってくる自然なものなので、変化から影響を受けることは避けられないと思います。

 そのため不安定さを前提とした上でどう支えていくかということが重要になりますが、上の項で取り上げたような既往、あるいは傾向がある場合には不安定さは激しくなりがちですし、そうすると周囲の人たちともぶつかりやすくなってしまい、十分な支えが得られない可能性も高くなってしまいます。

 周産期における行政や医療による支援やケアももちろん大事なものですが、支えるという意味ではやはり身近な人、家族の存在が重要だと思いますし、家庭が安定しているからこそ妊産婦本人が安心して支援やケアを受けられるということもあるように思います。

 妊娠・出産における支援やケアというとどうしても妊産婦本人に対するものが注目されがちですが、本人に対する支援やケアを手厚く行おうとしても、本人が生活する家庭を含めた環境が本人を支えきれていないとすれば、どんな支援やケアを手厚くしてもそれは十分なものとはならないように思います。

 産前産後のリスクに対応していくことを考える場合、本人に対するケアと同時に、本人を含めた家族、あるいは近しい人たちに対してどのような支援が必要かを考えることが重要だと思います。また妊娠・出産をする本人の立場から考えた場合、妊娠・出産そして育児に対して不安を感じてしまうものだと思いますが、どのような環境・状況であれば不安の受け皿になるかということを考えつくっていくことが大事と思いますし、そのような環境づくりの一環として各種支援やサービスを利用することを考えてもいいのではないでしょうか。

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「文責:川上義之
 臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」

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