心理カウンセリングの期間と頻度
1.心理カウンセリングの期間と頻度
1-1.心理カウンセリングの期間
心理カウンセリングは心の問題について相談をしていくものですが、では心理カウンセリングはどのくらいの期間続けていくものか、これくらいというイメージはお持ちでしょうか。
一般的に2、3ヶ月から半年ほどの期間に、数回から十数回ほど心理カウンセリングを続けていくと何かしらの変化があらわれてくると言われています。ただ、全ての人がその期間で効果があらわれるとは限りませんし、何かしらの変化が見られたとしてもそれが自分の望むものかどうかとなるとまた別の話かと思います。
実際にどのくらい期間心理カウンセリングを続けていくかというのは人によってかなり幅のあるもので、短い場合には1回限りで終了になるかもしれませんし、長い場合には10年とかそれ以上に渡って続けていく人もいます。心理カウンセリングを始める最初に回数と期間を決めて始める方法もありますが、そうでない場合には事前にどのくらいの期間になるかという見通しを立てるのは難しいのが本当のところです。
どのくらい期間続けることがいいのかというのはわからないところですが、心理カウンセリングを始める時のことについて考えることでどんなタイミングで終わりになるかということが見えてくるかもしれません。カウンセリングは何かしら自分が抱えている問題について相談することです。問題を抱えていてそれを相談するということは、たとえ明確に意識していなかったとしても、抱えている問題をなんとかしたいという動機、カウンセリングによってなんとかなったらいいという期待や目的などがあるのではないかと思います。動機や目的が生じることでカウンセリングが始まるとすれば、カウンセリングの終わる時というのは動機や目的がなくなった時ということになります。たとえば、「今自分の中で起こっていることで苦しくなった」という動機があり、「とにかく自分の気持ちを話したい」という目的でカウンセリングに訪れたとすれば、話すことで目的を達し、カウンセリングは1回限りということもあると思いますし、話したことでまた別の動機や目的が生じてくれば続くかもしれません。あるいは動機が残ったままであってもカウンセリングによって目的を達成することが難しいということになれば、カウンセリングにおける目的はなくなることになるので、その場合もやはり終わるタイミングになると思います。
動機や目的が始まる時と終わる時に関係するのですが、心理カウンセリングの期間について見通しを立てることが難しいのは、動機はもとより目的も、多くは心理的な事柄が関係しているためです。あるものにどうように感じるかは人それぞれ違いがあります。心理カウンセリングによって何か得られたものがあったとして、それで十分と感じて終わらせる人、十分と感じて続ける人、不十分と感じて続ける人、不十分と感じて終わらせる人など、同じような状況であっても、そこで起こってくる感覚には違いがありますし、そこでどんな判断を下すかも異なってきます。そのため心理カウンセリングの期間には人によって大きな違いが生じてくるのだと思います。
1-2.心理カウンセリングの頻度
上記したように、心理カウンセリングの期間は人によって大きな幅がありますが、頻度は人によってというよりは方法や心理カウンセリングの時期によって変わってくるという側面があります。
高頻度で行うものとしては、たとえば精神分析が挙げられます。精神分析では毎日分析を基本としており、かつては週5日以上、現在でも週3回以上というふうに決められています。反対に低頻度のものとしては、フォローアップ面接が挙げられます。これは心理カウンセリングの終了後なので、厳密には心理カウンセリングの頻度ではないかもしれませんが、だいたい3ヶ月に一度くらいの頻度で1回~数回面接を行うものです。もちろん、高頻度で行うものが精神分析に限られるわけではありませんし、低頻度だからといってフォローアップとも限りません。通常の心理カウンセリングを3ヶ月に一度、あるいはそれ以下の頻度で行っている場合もあると思います。
一方で週3日以上の高頻度、他方で3ヶ月に一度以下の低頻度と幅はありますが、現在日本で行われている心理カウンセリングの多くは週1回や隔週、あるいは月1回くらいの頻度で行われているのではないかと思います。カウンセリングを終了するタイミングは必ずしも合意を必要とするものではありませんが、カウンセリングの頻度については基本的に相談者とカウンセラーの間で合意の上で決められるものです。カウンセラーは相談者と初回の面接を行った上で相談内容と心理カウンセリングの方法を勘案して頻度を伝えます。それに対して相談者は自分の考えや思うところを話すわけですが、最初から精神分析をやろうと思っているのでもない限り週3日以上という考えは持っていないでしょうし、次第に低頻度になっていくことはあっても最初から低頻度というのは少ないと思います。そのためだいたい週1回~月1回くらいの頻度になることが多いと思います。
心理カウンセリングにおいて頻度が関係してくることは、主にカウンセリングの中で話し合われる内容と、相談者とカウンセラーの関係性です。絶対にそうなるというわけではなくあくまで傾向ですが、高頻度ほど内面的なことが話題にあがり関係性は密になりやすく、低頻度ほど外的なことが話題にあがり関係性は一定の距離を置いたものになりやすい傾向があるように思います。心理カウンセリングで話し合われる内容はもちろんですが、カウンセリングにおける関係性もカウンセリングの進み方やカウンセリングの中で起こることに関係してくるため、心理カウンセリングにおいて頻度は重要な要素のひとつになります。
心理カウンセリングの頻度は期間と違って決められるものです。自分にとってどのくらいの頻度で続けていくのがいいのかというのはわかりにくいところではありますし、現実的な問題も関わってくることですが、自身の相談内容や心理カウンセリングに求めるものなどから考えてみるといいかもしれません。
1-3.期間・頻度と心理カウンセリングの効果
上の方で触れたように、2、3ヶ月から半年ほどの間に数回から十数回のセッションを続けると何かしらの変化があらわれると言われています。頻度×期間がセッションの回数になるわけですが、そうすると高頻度で行った方が短期間でカウンセリングが終了になるように思われるかもしれません。ただ、心理カウンセリングの効果を考える上で難しいのは、心理カウンセリングの経過は右肩上がりで直線的に進んでいくことは(ほぼ)ないということです。心の状態は上がったり下がったり波があるものですが、心理カウンセリングもそれと同じで、順調に進んでいるように感じられる時期もあれば、停滞しているように感じられる時期もありますし、むしろ後戻りしているように感じられる時期もあるかもしれません。多くの心理カウンセリングの経過はそのような行きつ戻りつを繰り返しながら進んでいきます。セッションの回数が増えれば増えるほど効果もより高まっていくとは限らないことが心理カウンセリングの見通しを立てることを難しくしています。
では、期間や頻度が効果と全く関係がないかというとそういうわけでもありません。頻度の項でも述べたように、頻度が変わってくると話の内容や関係性が異なってきますし、期間の長さによって心理カウンセリングで経験することが違ってきます。期間や頻度の違いによってそれぞれの心理カウンセリングは異なった特徴を持つことになります。したがってそこから生じてくる効果も異なってくるというわけです。
おそらく心理カウンセリングはそこに参加する人に対してなんらかの作用を及ぼすものです。それを良いと感じるか悪いと感じるかは、心理カウンセリングを始める動機、達成したい目的、話したい内容、カウンセリングに求めるものなどの主観的な要因に左右されます。行動面の変化などを客観的な指標として用いることはできると思いますが、そうした変化を相談者が望んでいないとすれば、行動面の変化があったとしても良いとは感じられないのではないかと思います。
期間や頻度が人によって異なるということは、心理カウンセリングに決まった形というのはないということでもあります。心理カウンセリングに求めるものは人によって全く違ってきますし、その求めにどのように応じるかというのもカウンセラーによって異なってくると思います。相談者とカウンセラーの組み合わせがそこで行われるカウンセリングの形を決める大きな要因になります。また、同じ組み合わせでも時間の経過によって形は少しずつ変化していくかもしれません。はっきりと目に見えるわけではないですし、好きなように形を変えていくことは難しいですが、心理カウンセリングでは自分にとって納得のできる形を作っていくことが重要だと思います。そして納得のいくものを作ることができた時が終了になるタイミングかもしれません。
2.まとめ
心理カウンセリングの期間は人によって大きな幅があります。短い場合には1回限りになるでしょうし、長い場合にはそれこそ終わりが見えないかもしれません。カウンセリングの始まりは心理的な理由によることが多いと思うので、カウンセリングが終了する時はその理由に変化のあった時になるでしょう。ただ、心理的な理由は主観的なものなので、客観的な指標によって判断することはなかなかできません。他者から見て十分改善したように見えても、本人にはまだ続ける理由があるかもしれませんし、その反対も当然あり得ます。心理カウンセリングが続くのか終わるのかは本人の感覚に左右されるため、具体的にこれくらいの期間で終わるという見通しを立てることは難しいです。
次に、頻度についてもやはり人によって幅があります。週3日以上の高頻度で続けていくこともありますし、3ヶ月に1回以下の低頻度で続けていくこともあります。頻度はカウンセリングで話し合われる内容や相談者とカウンセラーの関係性に関連します。高頻度ではより内面的で密なものになり、低頻度ではより外面的で距離を置いたものになりやすい傾向があります。期間を事前に見通すことは難しいですが、頻度は最初に決めるものです。自分がどんな事柄に取り組んでいきたいと考えているか、人との距離感はどのくらいが丁度いいと感じるかなどのことから頻度を検討してみるといいかもしれません。
期間や頻度はその心理カウンセリングの特徴に関係してきます。カウンセリングの形は相談者とカウンセラーが共同して作り上げていくもので、それぞれの心理カウンセリングには独自性があります。そこで行われる心理カウンセリングがどんな形になるのか、前もって見通しを立てることは難しいですが、作っていく過程そのものが治療的な意味合いのあるものだと思いますし、完全な形ではなかったとしても何らかの形が出来上がったと感じた時が、カウンセリングが終わりになるタイミングなのだと思います。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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