心理カウンセリング:選び方のポイント
1.場所選びのポイント
1-1.カウンセリング機関の所在地を選ぶ
心理カウンセリングをやってみようと考えた時に、まず考えたいことは候補になる場所が通える範囲にあるのかどうかということです。1回限りということもないことはないですが、心理カウンセリングは継続的に行っていくことが多いので、通うことが難しい場所を選んでしまうと仮に続けていきたいと思ってモチベーションが高かったとしても、やはり段々と通うことがしんどくなってきてしまうのではないかと思います。また、遠い場所を選んだ場合には交通費も問題になってくると思います。保険の内でやっているか自費でやっているかで金額の多寡は変わってきますが、いずれの場合であっても継続していくことで少なくないお金がかかることになります。経済状況は人によって異なるので一概には言えないですが、カウンセリング料にプラスして交通費もそれなりの金額になるとすると続けることが難しくなることもあるかもしれません。
通える範囲で探す場合、自宅から近いところ、あるいは通勤路・通学路沿いにある場所が基本的には通いやすいと思います。その場所に行くまでの時間も比較的短くなりますし、交通費も抑えられるでしょう。ただ候補になる心理カウンセリングの機関が近いところにあるとは限りませんし、人によっては生活圏の中でカウンセリングに行くことに抵抗を感じる人もいるかもしれません。そうなると生活圏から少し離れたところを探すことになるかと思いますが、生活圏から離れすぎると通うのが大変ですし、近すぎると気になるかもしれないのでバランスをとるのが少し難しいこともあるかもしれません。
通える範囲に心理カウンセリングを行っている機関の候補がない時にはオンラインカウンセリングが選択肢になるかと思います。対面でのカウンセリングとオンラインでのカウンセリングでは特徴が異なるので、もしかしたら求めているものと違っている場合もあるかもしれませんが、通信環境とスマホかPCがあればオンラインカウンセリングは行えるので場所が問題になることは少ないのではないでしょうか。
都市圏に偏ってはいるものの以前に比べると心理カウンセリングを行っている機関は増えてきていますし、技術的な発展や通信インフラの整備によって必ずしも現地に行かなくともカウンセリングを行える環境になってきていますが、どこで心理カウンセリングを行うにしても続けやすさが場所選びのポイントのひとつになるのではないかと思います。
1-2.カウンセリング機関の領域から選ぶ
心理カウンセリングを行っている機関はいくつかの領域に分けられます。医療・福祉・教育・産業・司法、それと心理カウンセリングを専門に行っている相談室です。それぞれ特色が異なっていて、利用できる人、かかる費用、カウンセリング内容などに違いがあります。簡単に特徴を挙げてみます。
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①医療でのカウンセリング
心理カウンセリングをやってみようと思った時には何らかの悩みや困りごとがあるからやってみようとなることが多いと思います。その場合には睡眠や食欲、不安や抑うつ感など心身に何かしらの症状を抱えていることもあるので、医療機関はカウンセリングを行う候補として選択肢に挙がる人も少なくないと思います。
医療機関での心理カウンセリングではどんな立場の人がカウンセリングを行っているかに関わらず医師の診察とセットになっていることが多いと思います。カウンセリングが自費の場合には医療機関とカウンセリング機関は提携という形で別組織になっていることもありますが、その場合でも医療へのアクセスはしやすいですし、クライエントの希望に応じて情報共有も比較的スムースなのではないかと思います。
医療機関でカウンセリングを行うメリットはやはり医療へのアクセスしやすさにあります。悩みや困りごとだけでなく何かしら心身に症状を抱えていて薬物療法とカウンセリングを併用していきたいと考えている場合には医療機関での心理カウンセリングが第一候補として適当なのではないかと思います。
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②福祉でのカウンセリング
福祉領域におけるカウンセリングは各自治体が直接提供している地域サービスや自治体から委託を受けた社会福祉法人、NPO法人などが行っています。その地域に住んでいる人、働いている人が対象となり、具体的にどんなサービスを提供しているかは自治体によって差がありますが、基本的には無料で相談支援を行っています。
福祉的なカウンセリングの特徴は地域生活サービスとして無料で行っているということもありますが、その地域での暮らしをサポートしていくという側面があるため、生活上の困りごとに関する相談がメインになることが多いと思います。また長期に渡って相談を継続していくというよりは比較的短期間の相談になることが多いと思います。地域での生活をどう組み立てていくかという相談や金銭的に負担の少ない相談をしていくことを考えている場合は福祉でのカウンセリングが候補になると思います。
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③教育でのカウンセリング
教育機関でのカウンセリングはその名の通り各種の学校や教育委員会が行っているカウンセリングです。利用できるのは基本的にその学校に通っている、あるいは地域に住んでいる子どもとその保護者ですが、大学の相談室などは学校関係者だけではなく外部の人も利用できる場合があります。
大学の相談室は外部の人も相談ができるため少し特徴が異なりますが、教育機関でのカウンセリングは子どもの学校適応や進路に関する相談、保護者の子どもとの関係についての悩みなどが相談のメインになることが多いと思います。もちろん学校生活に関する相談しかできないということはないですが、学内のカウンセラーが相談を担当しているため、教職員との情報共有も行いやすいですし、やはり学校生活に関する相談を行いやすい環境だと思います。
学内で相談しづらいという場合は別ですが、学校での相談が利用できる場合には、相談を継続するかどうかに関わらずまずは学校でのカウンセリングを選択肢として考えてみることもひとつだと思います。
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④産業でのカウンセリング
産業カウンセリングは働く人に対して各企業や自治体が行っているカウンセリングサービスです。各企業に設けられたハラスメントや健康相談の窓口、企業内あるいは企業と契約した産業医、労働基準監督署などが相談先になります。対象となるのは基本的に働いている人とその家族になります。
具体的にどんなカウンセリングサービスが提供されているかはその企業がどんな窓口を設けているかによるため違いはありますが、業務に関すること、ハラスメント等に関すること、休職・復職に関することなど、やはり働くことに関わる相談がメインになることが多いと思います。イメージとしては教育機関でのカウンセリングの産業版という感じでしょうか。
教育機関と同様、企業の中で相談しづらいという場合を除き、働く上での悩みや困りごとはまず所属する企業の中で相談窓口の利用を検討してみることがよいのではないかと思います。
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⑤司法でのカウンセリング
司法領域でのカウンセリングは他の領域でのカウンセリングに比べると特殊で、カウンセリングを行うか否かを決定するのは司法行政で、行政側が必要と認めた場合に行われるものになります。裁判によって刑が確定した、あるいは保護処分等が決まった人の中でカウンセリングが必要と判断された場合に行われます。
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⑥私設相談室でのカウンセリング
私設相談室は、名称やカウンセラーの立場は様々ですが、原則的に心理カウンセリングのみを行う場所になります。機関によっては医療機関と提携してカウンセリングを行っているところもありますが、その場合でも医療行為が行われることはなく、仮に医師の資格を持ったカウンセラーがいたとしても、医療的な相談はあるかもしれませんが、心理カウンセリングのみを行います。私設相談室の対象となる人に特に決まりはありません。心理カウンセリングを希望してカウンセリングを行っていく合意ができれば誰でも利用することができます。費用について、日本には現状で個人向けのカウンセリング保険などはないため自費での支払いになります。
私設相談室の特徴は多様性にあると思います。カウンセラーの立場は様々と書きましたが、施設相談室を設立するのに何かしら法的な決まりがあるわけではなく、資格や専門性も様々です。また相談の方向性に関してもカウンセラーによって様々で、他の領域では目指す方向性がある程度決まっていることもありますが、施設相談室ではクライエントとカウンセラーの組み合わせ次第となります。
抱えている悩みや困りごとには色々な問題が絡んでいることが多いですが、心の問題について色々な側面から相談していきたいという場合には施設相談室での心理カウンセリングが候補になるかと思います。
2.カウンセラー選びのポイント
2-1.カウンセラーの属性から選ぶ
ここで言う属性とは、カウンセラーの年齢や性別、あるいは表示されている場合には出身地などです。実際にカウンセラーがどんな人なのかは会ってみないとわからないところではありますが、カウンセラーの属性については自分で決める、あるいは要望を出すことができる点です。
こういうカウンセラーがいいかもしれないと思ったとして、それは多分に直観的なものだと思いますが、意識はしていなかったとしても過去の人間関係から相性の良さそうな相手を選んでいるのかもしれませんし、あるいはカウンセラーの属性は自分が抱えている問題と何かしら関連していることもあるかもしれません。
あまり難しく考えることはありませんが、なんとなくこういう相手がいいかもしれないと感じた時には、それはただ単にそう感じただけではなく、何らかの意味があることなのかもしれませんし、自分の直観に従ってカウンセラーを選んでみることも大事になるのではないかと思います。
2-2.カウンセラーの資格から選ぶ
心理療法士、心理カウンセラー等、所属する機関によって名称は様々ですが、カウンセラーの資格や専門性は多岐に渡ります。臨床心理士であれば心理学、福祉士であれば公衆衛生学、医師であれば医学など。カウンセラーはいくつかの専門分野について勉強してはいますが、基礎となっている専門分野が異なればどんなところに注目しやすいかということが異なってくるので、同じ心理カウンセリングでも個々の特色は異なってきます。
大雑把な区別にはなりますが、自分が抱えている問題について、心理的な面から相談するのであれば臨床心理士、環境面から相談するのであれば福祉士、身体を含めた面から相談するのであれば医師など、カウンセラーが所持している資格からカウンセラーを選んでみることもよいのではないかと思います。ただ、心理カウンセリングは心理系の資格を取得して行っているカウンセラーが多いと思うので、それ以外の資格所有者を見つけるのは少し大変かもしれません。
あとこれは余談になりますが、公認心理師については様々な立場の人が取得しているので、現状で公認心理師に共通する専門性がどんなものか、そういうものがあるのかどうかわかりません。公認心理師以外に他の資格を持っていることもあるのでそちらを参考にするのがよいかもしれないです。
2-3.所属カウンセラーの人数で選ぶ
カウンセリング機関によって所属しているカウンセラーの人数には違いがあります。個人の施設相談室でカウンセリングを行っている場合には当然カウンセラーは一人になりますし、組織の中であっても所属カウンセラーは一人ということもあります。全ての機関で所属カウンセラーを確認できるわけではありませんが、カウンセリングを行っていることをおおやけにしているところであればホームページ等で所属するカウンセラーを確認できることが多いのではないかと思います。
一人でカウンセリングを行っている場合はひとつの時間枠に一人(一組)のクライエントになるので、他のクライエントと顔を合わせることはほとんどないと思いますし、少なくとも相談室の中で他の人の目が気になるということはないと思いますが、そのカウンセラーと相性が合わないと感じた場合に他の場所を探すか紹介してもらうしかなくなります。反対に複数のカウンセラーが所属しているところでは、複数の部屋で複数のカウンセリングが行われていることが多いので、部屋のつくりによっては他のクライエントの存在を意識せざるを得ないこともありますが、複数のカウンセラーが所属していれば相性が合わない場合はまた別のカウンセラーとカウンセリングを行うこともできるので、別の場所を探さずに済むかもしれません。
これはどちらがより良いというよりはどちらの方が自分に合っているという点から判断することが適当かと思います。どんな環境でカウンセリングを行うことが自分にとって相談しやすいか、自分の問題に取り組みやすいかを考えてみることが大事と思います。
3.まとめ
心理カウンセリングをやってみようと考えた時に、選ぶ際のポイントは主に場所とカウンセラーになります。
場所選びではまず所在地が重要になります。心理カウンセリングはある程度の期間継続していくことが多いので、あまりに遠いところにある場合は通うことが難しくなって続けることができなくなるかもしれません。そのため自宅から、あるいは通勤路・通学路から近いところで選ぶことが大事です。ただ生活圏に近いことが気になる場合には少し離れた場所で見つけることが必要ですが、その場合も続けていくことができる距離かどうかを併せて検討することが重要です。オンラインカウンセリングであれば場所が問題になることはありませんが、対面とはまた違った状況でカウンセリングを行うことになります。その場合もやはり続けられるかどうかが検討の際のポイントになると思います。
心理カウンセリングを行っている機関は大きく分けて、医療・福祉・教育・産業・司法、そして私設相談室の6領域になります。司法は特殊なため選択肢になることはありませんが、それぞれの領域で特徴や対象となる人、かかる費用などに違いがあります。自分の相談内容とその機関へのアクセスしやすさという点から候補を検討してみることが大切です。
カウンセラーを選ぶ際はカウンセラーの属性、資格、個人か複数かという点から検討してみることができます。属性に関しては直観的なものかもしれませんが、相性が良いと感じる相手であったり自分の問題と何かしら関係していたりすることもあります。単に感覚的なものだけでなく何らかの意味が含まれていることもあるので直観に従ってカウンセラーを決めることも大事だと思います。
一口に心理カウンセリングといってもその内容は多岐に渡るため、カウンセリングを行うカウンセラーの専門性も様々です。カウンセラーの専門性について全てわかるわけではありませんが、カウンセラーの持つ資格からある程度専門性を予測することができると思います。自分の問題についてどんな面から取り組んでみたいかということに合わせてカウンセラーを選んでみることもひとつではないかと思います。
カウンセリング機関によって所属するカウンセラーの人数は異なります。個人か組織か、一人か複数人かによってカウンセリングを行う環境や雰囲気は違ってきますので、自分にとって相談しやすい環境はどんなものかという点から選んでみてもよいのではないでしょうか。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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