精神状態が良くない時にも生活習慣を維持することの重要性
1.精神状態の変化
精神的な状態は揺れ動いているもので、短期間に大きく上下することもあれば、長期的に緩やかに上がっていく、下がっていくこともあります。ある一定の状態が長い間ずっと続いていくというのはなかなかないのではないでしょうか。
精神状態は様々なものから影響を受けます。たとえば生活上や社会的な出来事、心身の健康状態、気候などの影響で大きく、あるいは微妙に変化します。状態の変化のきっかけがわかりやすい場合もあればわかりにくい場合もあると思います。
精神的な変化と影響の関係がわかりやすい場合には、影響を受けているものに対処することでの変化を抑えることが比較的やりやすいかもしれませんが、どうして自分の精神状態が変化しているのかよくわからない場合には、何に対してどんな対処すればいいかわかりにくいので、精神的に辛い状態だったとしてそれがなんとか治まるまで耐えるしかないこともあります。
気分転換をすることで気を紛らわせるという方法もありますが、精神状態の変化が大きい場合には、気分転換を行おうとしても効果が薄かったり、そもそも気分転換の行動自体が難しいかったりする場合もあるかもしれません。
2.変化に対する備え
精神状態の大きな変化は、それが高揚する方向であっても低迷する方向であっても極端になってしまうと普段通りの生活を送ることが難しくなってしまいます。何かをやろうと思っても高揚しすぎた状態では空回りしてしまうかもしれませんし、低迷しすぎた状態では動き始めることができないかもしれません。
精神状態は思考や行動に影響を与えます。小さな変化であればその影響も小さいものなので思考や行動が阻害されるということはあまりないのですが、大きな変化になると影響も大きくなり、普段通りの思考や行動をすることが難しくなります。物凄く怒っている時にした行動を思い出して後悔するなどはよくあるかもしれません。
上でも述べたように短時間で起こってくる強い情動の変化は、その変化が起こってしまった後に対処しようと思っても難しいことが多いです。情動に影響を受けることで思考や行動が制限されてしまい対処するための余力がなくなってしまうからです。
変化が起こった際にどうするかという対処法も大事だと思いますが、同じような精神状態の変化が繰り返されているとすれば、長い目で見たうえでどのような備えをしておくかを考えてみることも重要です。変化の理由が不明瞭な場合、精神状態の変化自体をなくすことは難しいですが、変化を小さくしたり治まるまでの時間を短くしたりすることはできるのではないかと思います。
3.生活習慣と心の状態
長期的な視点で備えを考えた場合、やはり生活状況を整えていくことが精神的な安定につながりますし、それによって精神状態が悪化した時にも真ん中の状態に戻ろうとする力が働きやすくなると思います。生活の中で自分の心身の状態にプラスになる習慣をつくり、悪化した際にもその習慣を続けていくことが自分自身を安定させるために役立ちます。
精神状態が悪化した際には、仕方のないことなのですが、生活状況が大きく乱れてしまうことが少なくありません。高揚した状態は気分が良いので自分が悪い状態とは感じないことが多いのですが、精神的に落ち込んだ状態と同様に、食事の量・頻度が減ったり睡眠の状態が良くなかったりなどの状態が現れます。
こうした生活状況の乱れは精神状態の回復を妨げるだけでなく、より悪化させてしまう要因になることが少なくありません。そのため生活状況を整えていくことが精神状態の回復に必要なことなのですが、精神状態が悪化している時には生活に振り分けられる力も少なくなってしまい、生活状況を安定させることは容易ではありません。
そこで生活全般の状況を整えるのではなく、生活習慣の中で自分の心身を回復させるのに役立つ習慣を続けられることが大切です。たとえば、洗濯や掃除などは必要最低限に留めるけど食事は1日3度食べるようにするなどです。精神状態が悪化している時には食欲が湧かなかったりひどく億劫に感じられたりして、食べることが苦痛になるかもしれませんが、一口だけでも1日3度食べる習慣を維持することで心身の回復につながるかもしれません。
どんな習慣を維持するかは人によって異なってくることです。食事もあまりに苦痛が大きい場合には回復の妨げになってしまうかもしれません。ただ、どんな方法であってもそれが習慣になっていることが重要です。普段やっていないことをいざという時にやろうと思ってもうまくいかないことが多いのではないかと思います。
4.自分の中に余力をつくること
精神状態の変化には、その変化のきっかけや理由となる要因があります。その要因は現在の生活の中にあるかもしれませんし、過去の成育歴の中にあるかもしれませんが、心理的な事柄が要因となっている場合には、その要因を対処したり克服したりすることで変化から受ける影響を小さくし、うまく付き合っていけるようになるのではないかと思います。
ただ、変化を引き起こす要因に取り組んでいくことは大きな労力を伴うものですし、上でも述べたように要因がすぐに見つかるとも限りません。見つけること、取り組むことに長い時間がかかることも少なくありません。そのため変化の要因に取り組まないという選択肢も排除すべきではないように思います。状況や事情が変われば考えが変わることもあると思います。
対処していくのか、克服していくのかで取り組みの過程は異なりますし、変化の要因に対応しないことも含めてどうしていくかは人それぞれですが、どんな選択をするのかに関わらず可能な限りでの精神状態の安定を目指すことは重要です。自分の課題に取り組むにしても情動の嵐が過ぎるのを待つにしても、そのためのエネルギーは必要だからです。
生活状況を整えることや精神状態が悪化した時に習慣を維持することは直接精神状態に働きかけることではありませんが、身体的な活動を通して間接的に精神状態に働きかけることになります。生活面を安定させることが精神面の回復につながり、それによって自分の中に余力をつくることができれば、行動できる選択肢の幅が広がっていくのではにかと思います。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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