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2023.10.12

トラウマ記憶が生じるメカニズム ~神経細胞ネットワークの形成~

index

  1. 1.非日常的なトラウマと日常的なトラウマ
  2. 2.外傷的出来事と無関係な事柄の関連付け
  3. 3.トラウマ記憶が生じるメカニズム
  4. 4.トラウマ治療と神経ネットワークの解体

1.非日常的なトラウマと日常的なトラウマ

 何かしらショックを受ける出来事があり、それが後々まで尾を引いている時に、それをトラウマになっていると表現することがあります。

 トラウマという言葉はPTSDなど、生命に危険が及ぶような体験とそれに続くストレス反応が見られる際に使われるようになった言葉ですが、現在では生命に危険というほどではなくとも、過去の出来事を今に引きずるような外傷的体験全般にトラウマという言葉を使っているように思います。

 生命に危険が及ぶような出来事を大文字の”Trauma”、それ以外の出来事を小文字の”trauma”と分類することもありますが、日本語では書き分けはできませんし、ある出来事がどれ程外傷的に感じられたということは主観的なものなので、少なくとも一般的には無理に分けずともよいのではないかと思います。

 言葉が意味する幅が広がってきたということは、トラウマを抱えることはそれほど珍しいことではないということだと思います。精神科的診断でいえば、トラウマが関係しているものはPTSDなどのストレス反応性の診断だけでなく、恐怖症性障害や不安障害なども関係していますし、そのような診断がつくほどではなくとも過去の出来事を思い出して嫌な気持ちになったり落ち込んだりといったことは経験のある人も多いと思います。

2.外傷的出来事と無関係な事柄の関連付け

 トラウマは日常的に生じる可能性のあるものですが、ショックを受けるような体験の全てがトラウマになるわけではないように思います。強く外傷的な体験であってもそれ以降引きずらないこともありますし、それほど外傷的には感じなかったとしても後まで引きずることもあります。

 こうした違いが生じる要因は、その出来事に対する主観的な体験の強さやレジリエンスなどの個人特性が関係しているのかもしれませんが、出来事とその時の周囲の状況、その時の情緒状態などの関連付けの程度も違いが生じる要因になっているのではないかと思います。

 恐怖症に関する動物実験では、動物にある音を聞かせた後に電気刺激を与えることを繰り返していくと、音を聞かせただけで怯えるような反応を示すようになります。これは本来関連がないはずの音と電気刺激を関連付けて学習することで、音の後には電気刺激がくるということを覚えた結果と考えられています。

 人の現実生活はこれ程単純ではないでしょうが、関連付けの程度がトラウマが生じるかどうかやその強さに関係しているのではないかと思います。つまり、関連付けるものが多ければそれだけ過去の記憶が刺激されやすくなり、結果として症状や反応が繰り返されてしまうということです。

 関連付けられた事柄が多いと、トラウマの原因となる出来事を忘れてしまったとしても症状や反応は起きやすいと思います。そのためフラッシュバックなどの症状が起こった時に、何故それが起こるのかわからないまま継続してしまうのだと思います。

3.トラウマ記憶が生じるメカニズム

 上記したような、無関係な事柄同士を関連付ける連合学習は以前から知られている現象ですが、近年ではその神経学的なメカニズムについても解明が進みつつあります。

トラウマ記憶はどのようにして脳内に作られるのか
〜光と機械学習で脳神経細胞ネットワークレベルの変化を初めて解明〜

(生理学研究所プレスリリース)

 この研究はマウスを被験体として恐怖体験前後の神経細胞の変化を調べたものです。行われた実験は上に挙げたものと同じ、弱い電気刺激と音の組み合わせです。

 刺激を繰り返していくと音に対して恐怖反応を示すようになりますが、そのトラウマが生じる前後で見ると、トラウマ体験(電気刺激)に強く活動する神経細胞を中心として、神経細胞のネットワーク、トラウマ記憶のネットワークが新たに形成されていることがわかりました。また、消去学習によって恐怖反応が出にくくなったマウスでは、このネットワークの活動と情報処理が破綻していることが観察されたということです。

 これはトラウマのネットワークが形成される時には、トラウマ体験に関連する出来事だけでなく、無関係の事柄もネットワークに含まれてしまい、ネットワークが活性化する際の刺激のひとつになってしまうということと思います。またトラウマを治療していく際にはネットワークを活性化させにくくすると共に、ネットワーク自体を崩していくことが必要ということだと思います。

4.トラウマ治療と神経ネットワークの解体

 上記の研究では、神経ネットワークの評価が薬物療法の効果判定に用いられるかもしれない、ということでした。薬の効果によって神経ネットワークの活性化を抑えられるようになれば、トラウマ治療の候補として薬物療法が用いられるようになるかもしれませんが、現状ではトラウマの治療は心理療法やカウンセリングが中心だと思います。

 トラウマ反応への対処法は主に反応を弱めていくか、反応が現れる予兆を見つけて反応が現れる前にその状況を避けるかになると思います。トラウマの治療にネットワークを崩していくことが必要だとすれば、避けたままではネットワークを維持することになってしまいますが、思考も動きも停止してしまうほどトラウマ反応が強い場合には、弱めるための取り組みは難しいと思います。そのため弱めるための取り組みと避けることは両方とも治療には必要でしょう。

 弱めるための取り組みとしては、生じてくるトラウマ反応になれること、耐えられるものにしていくことが挙げられます。また、トラウマのネットワークには本来無関係な事柄も含まれているので、そのような無関係な事柄を切り離していくことでネットワークの解体につながるかもしれません。

 トラウマ体験そのものを消すことはもちろん叶いませんが、トラウマに関連するネットワークを崩していくことで、そこから生じる症状や反応は弱くなっていくと思いますし、トラウマに関連する記憶も次第に忘却されていくかもしれません。

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「文責:川上義之
 臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」

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