1.不安の機能

 日常の中でなんとなく嫌な予感がして別の経路を使うとか、急に何かしなければならないような感覚を持つなどの経験はあるでしょうか。それはもしかしたら不安を感じた結果の行動かもしれません。

 不安はおそらく人に限らず多くの動物が持っている危険に対する信号と考えられています。生物が生きていくためには生命を維持させるための行動だけでなく、生存を脅かすような危険から身を守ることも重要になります。そうした危険を避けるための信号として不安は機能しています。

 不安は人が生きていくために必要な機能ではあるのですが、感じる不安の強度には個人差があります。もちろん大きな危険に対してはより大きな不安が生じやすいと考えられますが、同じ状況であっても、ちょっとした違和感くらいの不安を感じる人もいれば、そわそわして落ち着かずパニック様の状態になってしまう人もいます。

 こうした個人差は生まれつきの傾向かもしれませんし、経験によって獲得されたものかもしれませんが、大きすぎる不安感はやはり生活の質の低下させてしまいがちになります。そのため生きていく上で必要な機能ではあっても、だから放っておくということはできませんし、不安が強すぎる場合にはやはり何からしら対応することが必要です。

2.不安への対策

 不安は感情であると同時に生物に備わった機能のひとつであり、ある状況に対して、あるいはある状況を想定することに対して自然と生じてくる感覚です。そのため基本的に不安を感じないようにすることはできないことです。

 不安はその強度が適度なものであれば行動を起こすための原動力になりますが、強すぎる不安は逆に行動を阻害してしまったり、過剰に同じ行動を繰り返すことにつながってしまったりします。

 不安に対して適切な行動を起こすためには、不安感に振り回されてしまわないようにすることが必要ですが、そのための方策としては大きく分けて、不安の緩和、不安の回避、不安耐性の向上の3つになると思います。

3.向き不向きと組み合わせ

 不安への対処法をいくつか挙げてみましたが、どの方法も有効性はありますが、やはり人によって効果を感じられることもあれば、効果を感じられないこともあります。人からこれが良かったと聞いて試してみてもうまくいかないことはあると思います。

 緩和する方法では、リラックスする感覚がどうしても掴めないという場合は不安も緩和することは難しいかもしれません。実際に力が抜けているかどうかは重要ですが、脱力している感覚の心理的効果も同様に重要だからです。またお薬の効果に関しても個人差がありますし、副作用や抵抗感によって利用を躊躇する場合もあると思います。

 不安を回避する方法では、不安の対象が明確でない場合は物理的に離れることは難しいですし、不安へのとらわれが強い場合には、切り替えることができないかもしれません。また回避の副作用的な側面として、回避行動を続けていると不安耐性が低下してしまう可能性があります。不安を回避しているうちに不安への恐れが大きくなってしまい、そのことが生じた不安感をより高めてしまうかもしれません。

 不安耐性を高める方法では、不安が耐え難いほど強い場合には、その不安の状態に留まることは難しくなりますし、緩和や回避の方法を取らざるを得なくなるかもしれません。不安状態に留まったとしても不安が勝り過ぎてしまうと不安への恐れを強めてしまいます。耐性を向上させる場合には、不安と耐性のバランスが重要です。両者が大きく乖離している場合には、耐性を向上させる方法はうまくいかないかもしれません。

 方法ごとに向き不向きはありますが、ひとつの方法にあまり効果が感じられない場合でも、他の方法と組み合わせて実践することで効果が大きくなることがあります。たとえば、カウンセリングは不安耐性を向上させることを目的として行われることが多いですが、薬物療法と並行することでより効果的になることが多いというデータがあります。

 またある方法が効果的と感じられ過ぎることにも注意が必要です。特定のやり方だけに頼ってしまうと、場合によってはその方法に対して依存的になってしまうかもしれませんし、反対に効果が感じられにくくなり、より頻度や強度を増やすことになるかもしれません。そうするとやはり生活に支障を来してしまいます。

 複数の対処法を組み合わせたり、場面に応じて使い分けていくことが、生活と対処法を両立させていくために重要ではないかと思います。

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「文責:川上義之
 臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」

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