手探りで進めていくカウンセリングと自分自身に対する分からさな

1.不明瞭な動機や問題
カウンセリングをやってみようと思う時、特に理由なくやってみようと思うことはあまりないように思います。たいていの場合は生活上の困りごとや悩みを抱えているとか、自分自身に対する理解を深めたいなど、行動を起こすに至った動機が存在しています。
ただ、動機に対して自覚的でなかったり、抱えている問題が明白でないこともあります。生活上で何か問題があるわけでないのに困り感や不全感をもっていることもありますし、理由について「なんとなく」としか言葉にできないこともあります。
動機や問題についてうまく言葉にできないけれど、ちょっとした違和感や正体の分からないしんどさを抱えているということはありますし、そうした違和感やしんどさへの対処としてカウンセリングをやってみようという場合もあると思います。動機や問題が不明瞭のままカウンセリングを行うというのは不思議に思うかもしれませんが、こうした分からなさを探索する際にカウンセリングは役立つ可能性のある方法のひとつだと思います。
2.問題は何かということを探索する
上項で困りごと・悩み、あるいは問題という言葉を使いましたが、困っている事柄と抱えている問題が常に一致するかというと必ずしもそうとは限りません。
たとえば、意見を述べるべき場面で自分の話ができなくなってしまうことに困っているとします。そのまま受け取れば意見を言えないことが問題と考えることができますが、背景に他者に対する不安や恐れがあってそのために意見が言えないとすれば、取り組むべき問題はそうした不安や恐れと考えることもできます。取り組む方法としては色々な場面で意見を伝える練習をしていくとなったとしても、抱えている不安や恐れに目を向けないまま進めるとうまくいかないかもしれません。
心理状態は複雑なものなので困りごと・悩みと抱えている問題をすっきりと分けられないこともありますが、ひとつの困りごとを解決してもまた別の困りごとが起こるということを繰り返していたり、困りごとがはっきりせず漠然とした違和感や不安感に悩んでいたりする場合には、何がそうした困りごとや悩みを生じさせているのか、自分が抱える問題について探索していくことが状況を脱していくことに役に立つのではないかと思います。
3.手探りで進むカウンセリング
カウンセリングは相談者とカウンセラーが話をして進めていくものですが、何を話すのか、何に取り組んでいくのかということが決まっているわけではありません。これは人それぞれ抱えている困りごとや悩み、問題が違っていて目標や目的も異なっているからというのこともありますが、何をすればいいのかが決まっているわけではないということでもあります。
そのためカウンセリングには手探りで進めていくという性質がどうしてもついて回ります。カウンセリングにおけるテクニックも方法論ごとにありますが、相談者・カウンセラー、その組み合わせと個別性があるため、機械的にテクニックを当てはめても有効なカウンセリングを行うのは難しいことが多いです。
何をするのか決まっていないというのは地図を持たないまま見知らぬ場所に行くようなもので不安を感じさせることですが、反面自由度が高いということでもあります。自分自身に対する分からなさの感覚を抱いている時には、決まっていることが少なく自由度が高い方がより探索しやすいと思います。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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