人間関係のスルースキル
1.人間関係の実務的側面と情緒的側面
他者と関わることは人が社会の中で生活をしていく上で欠かせないことでありますが、それゆえ人間関係についての悩みは避けられないものであるように思います。
同じ方向を向いて共に活動に取り組むことができている時や相手と一緒にいて心地よいと感じられる時にはこの人(たち)がいて良かったと思えますが、考えや意見が折り合えなくなったり自分の意に沿わないことをさせられていると感じたりした時には、一緒にいることが苦痛になるかもしれません。
人間関係は大きく実務的な側面と情緒的な側面に分けられると思います。実務的な側面とは、ある課題を達成するためにそれぞれが協力しながら各々の役割を果たすことです。情緒的な側面とは、自分や相手に対して感情を抱くこと、あるいは両者の情緒的な欲求(愛着や自尊心など)を満たそうとすることです。
実務的側面と情緒的側面は明確に分かれているものではなく、実際の人間関係では両者が一体となっている場合がほとんどです。
たとえば、同じ目的のために協力して作業をしているうちに相手に好意を持つことはありえますし、苦手意識を持っている相手と一緒に何かをしようと積極的に思うことはないかもしれません。
このように実務と情緒は関連しているのですが、自分が結んでいる人間関係について考えてみようとする時、実務的側面と情緒的側面に分けてみると考えやすいかもしれません。
2.実務面の役割に徹する
実務的な側面において、経験や力が不足していて自分の役割が果たせずに関係がうまくいかないことはありますが、人間関係のトラブルの多くは情緒的な側面が関係していると思います。
たとえば、経験や力が足りずに役割をこなすことができないのであれば、何かしらの方法で足りない部分を補うことができれば問題はないと思いますが、自分の不足に対して無力感を抱いたり、相手の不足に対して怒りを感じたりすることで、補おうとする動機が弱くなってしまいます。その結果、課題をうまく達成することができずに人間関係がギクシャクしてしまうことになるかもしれません。
人間関係のトラブルが起こった際に、実務面と情緒面を互いに調整しながら問題を解決できることが理想的ではありますが、情緒面が複雑に絡み合っている場合は特に調整そのものが難しいことが多いのではないかと思います。
解決が困難な場合には、トラブルを抱えている相手と離れてしまうことも方法のひとつではありますが、それができない場合もあると思います。
そのような時には、(可能であれば相手と話をした上で)相手との関係を実務面のみに限定できるように工夫や練習をしていくことが必要と思います。感情を入り込まないようにすることは困難なことではありますが、自分が果たすべき役割に集中することが関係の維持につながると思います。
また、同時にストレス解消の手段をつくっておくことも重要です。役割に集中したとしてもネガティブな感情は蓄積していくものなので、その感情を消化していく方法や場所が必要なことになります。
趣味に興じたり人と遊んだりすることがストレス解消の手段になることが多いですが、それで消化が難しい場合にはカウンセリングも選択肢のひとつになると思います。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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