目標との折り合い
1.課題・目標の設定
仕事、勉強、趣味など、生活の中で行っている活動はいくつもありますが、なんとなく漫然と続けているとマンネリ化してしまい、なかなかやる気が起こらなかったり飽きてしまったりするかもしれません。
自分なりの課題や目標を設定して、それらを念頭に置きながら活動を繰り返していくことで、どんな方向に知識や技術を広げていくことが良いのかヒントを得られ、活動に対するモチベーションを高めることに役立つと思います。
ただ、課題や目標に対する意識が強すぎてしまうと、活動そのものを楽しむことが難しくなってしまったり、うまくいかないことに対する焦りや苛立ちが生まれてしまったりすることにつながってしまうこともあります。
たとえば、将来的な目標を達成できるかどうか不安を感じることもありますし、毎日の課題をこなせなくて自分を責めてしまったりすることもあるとおもいます。
自分なりの課題や目標を設定することは活動を続けていく上でとても重要なことですが、それらに意識が集中しすぎてしまうと効率を低下や心理的な妨げになってしまうことがあるため、課題・目標と実際の活動の折り合いをつけていくことが大切になります。
2.スモールステップ
どんな目標を立てることがモチベーションを高めるために有効になるか、人によって様々と思います。遠大な目標を立てることがいいのか、自分にとって達成しやすいと思える目標を立てることがいいのか、性格や動機の特徴によって変わってくるでしょう。
どんな目標を立てる場合でも役立つと考えられるのは、短期的な目標から長期的な目標までロードマップを作っておくことです。毎日の課題を少しずつ達成していくことが将来の目標を達成するために重要となります。
たとえば、将来は作家になることを目標にしているとします。その場合は長期目標として作家として生活していこと、中期目標として作品賞に応募して受賞すること、短期目標として日常的に本を読んだり文章を書いたりすること、を設定します。
作家になるためには自分が作った作品を誰かに買って読んでもらうことが必要ですが、いきなり作品を発表してもそれを知っている人が少なければたくさんの人に読んでもらうことは難しいです。そのため自分が作品を作っていることを知ってもらい評価してもらうために多くの人が注目している場で作品を読んでもらうことが必要です。そのような場で取り上げてもらうには高い文章力や訴えかける表現力が必要です。その力を養うために日々文章を書く練習をしたり他者がどんな表現をしているか知っていくことが重要です。
このように短期、中期、長期に分けて目標を設定しておくと今やっていることがどんなことにつながるのか、将来のために今何をやればいいのかが明確になると思います。
3.目標との折り合い
目標のロードマップは自分が行う活動において設定する課題を明確にすることに役立ちますし、目標までの進度を明確にし必要に応じて課題を調整する上でも役立つと思います。現在と過去・未来という時間軸で物事を考えやすくもなるでしょう。
ただ、時にひとつの目標に意識が固定してしまって辛くなってしまうこともあると思います。上でも書きましたが、将来の目標が遠すぎるように感じられて自分には無理ではないかと不安になったり、毎日の課題をこなすことだけしか考えられなくなって辛くなったりすることがあります。不安や辛さからは逃げたくなりますが、逃げてしまうと目標達成が不可能になってしまうようなジレンマに陥ってしまうこともあります。
そのような時には目標への視点を動かしてみることが効果的かもしれません。将来の不安が強い時にはとにかく日々の課題に集中できるように自分の意識を向けていくこと、日々の課題をこなすことが目的になってしまっている時には、あくまで将来の目標の達成が目的なのであって今の課題をこなすことは目的のための手段であること、などを考えてみるといいかもしれません。
将来がどうなるかはわからないことですし、日々の課題をこなさないことがすぐに目標の達成を不可能にしてしまうわけでもありません。視点を動かすことで固定してしまっていた考えが少しでも柔らかくなれば気持ちの変化も起こってくるように思います。
4.集中しすぎないこと
目標を持ってひとつのことに集中して取り組んでいくことは自分自身の技術や知識を高めていくために重要なことですし、生活や人生に張りをもたせる上でとても大事なことです。ただ、うまくいっている時には全く問題のないことであっても、行き詰まってしまった時には集中していたことがマイナスに働いてしまうこともあります。
自分が取り組んでいたこと以外のことを考えることが難しくなってしまったり、場合によっては自分が取り組んできたことが全て無意味にかんじられてしまうこともあるかもしれません。不安やうつ気分は多かれ少なかれ誰もが経験するものですが、状態が悪化してしまうとそれから立ち直っていくにはかなり時間と苦労を要するものです。
目標を強く持つことと同時に、その目標に対して柔軟に折り合いをつけていくことができるようになることは、生活を豊かにしていくためにも心を健康な状態に保つためにも重要なことだと思います。
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「文責:川上義之
臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」
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