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2022.10.02

基礎研究と実践をつなぐ計算論的アプローチ

index

  1. 1.強迫性障害とは
  2. 2.強迫性障害の計算論的アプローチ
  3. 3.計算論的アプローチとは
  4. 4.ヒントになるかも

1.強迫性障害とは

 強迫性障害は強い不安とその不安への対処行動を特徴とする精神疾患のひとつです。不安を引き起こす考え(強迫観念)とその不安を軽減させようとする行動(強迫行為)が繰り返されることで予定を立てて行動することが難しくなったり、強迫観念・行為の内容によっては心身の健康を損なうこともあります。

 よく知られているものとしては確認強迫があります。これはたとえば、家の鍵を閉めたかどうか気になってしまい(強迫観念)、家から離れても何度も確認しに戻ってしまう(強迫行為)ものです。症状の強さによっては出かけることすら困難になってしまうかもしれません。

 強迫観念と強迫行為はその両方が現れていることもありますが、強迫観念のみで強迫行為は見られないこともあります。

 強迫性障害の治療には、主に薬物療法と行動療法が行われています。両者を併用している場合もあれば、どちらか一方だけが行われている場合もありますが、それらが有効であることはわかっていても何故有効であるのか、そのメカニズムはわかっていない状況でした。

2.強迫性障害の計算論的アプローチ

 上記したように、強迫性障害とその治療効果に関するメカニズムについてはよくわかっていない状況でしたが、そのメカニズムについての研究結果が報告されていました。

強迫症のメカニズムを解明
~不安を伴う繰り返し行動を生み出す計算論モデルを確立、
治療の最適化に応用可能~

(奈良先端科学技術大学院大学プレスリリース ※PDFファイル)

 この研究では、行動を強化する学習(特定の行動が増える)に着目し、行動を身につけていく際に脳で起こっている計算についての数理モデルを作成、いくつかの学習パラメータを設定し、数理モデルを用いたシミュレーションや検証を行って強迫症状の学習の特徴や治療効果のメカニズムを描き出しています。ここでの学習パラメータとはある個人がどんな行動を身につけやすいかという特性を数値化したものです。

 結果から以下の3つの事柄が明らかになりました。
(1)現在の結果と過去の行動の関連付けにおいて、予想より結果が悪い場合の学習パラメータが、予想より結果が良い場合の学習パラメータに比べて極端に低いというアンバランスがある場合、強迫症状がいつの間にか学習されてしまう
(2)強迫症患者は健常者と比較して、(1)の学習パラメータのアンバランスを示すことが見出された
(3)セロトニン再取り込み阻害薬(SRI、抗うつ薬)の投与量が増えるほど(1)の学習パラメータのアンバランスが解消される

 (1)がわかりづらいですが、予想よりも良い結果が得られた際の原因・理由として、現在に近い行動だけでなくより過去の行動まで参照される(この良い結果は過去にこんなことをしたからだetc.)ために結果と行動の結びつきが強くなるということかと思います。別の表現をすると、予想よりも良い結果については、偶然や他者の要因ではなく、自分の行動が結果をコントロールしていると捉える傾向があると言えるかもしれません。

3.計算論的アプローチとは

 私自身はあまり聞きなれない言葉だったのですが、計算論的アプローチとは

「脳における知覚・認知をある種の“計算”ととらえ、その情報処理プロセスを数理モデル化することで神経システムの動作原理を探求する研究手法を計算論的アプローチといい」、それを精神医学に応用したものを計算論的精神医学と呼ぶようです。
(上記は神経研究所 疾病研究第七部のホームページから引用)

 ホームページの説明では、「生物学的な知見と行動・症状レベルの臨床的な病像の間を橋渡し」と書かれていましたが、確かに現状では研究・実験と臨床実践をつなげるには難しい課題も多くあります。

 たとえば、動物実験で有用な結果が得られたとしてもそれをそのまま人に対して適用するわけにはいかない場合もありますし、臨床実践で得られた知見を基に研究・実験を行う時にも得られたデータからどんな要素を抽出することが適切かは簡単にはわからないかもしれません。

 研究・実験と臨床実践の間に計算論的アプローチを取り入れることで両者の間の行き来がスムーズになることが期待できるのだと思います。たとえば、人に対する実験は難しくても人を想定したシミュレーションであれば研究を進めることができそうです。

 こうしたモデルの作成やシミュレーションが可能になった背景としては、人工知能(AI)の開発技術や運用技術が発展してきたことが大きいようです。AIの発展によって今まで時間やコストなどが大きく緩和されたことで、計算論的アプローチによる研究を進めることが可能になったということでした。

4.ヒントになるかも

 今回の研究は強迫性障害を取り上げたものでしたが、他の精神疾患についても計算論的アプローチを取り入れた研究は進められているようで、いずれ様々な研究結果の発表が増えてくるように思います。

 今回の研究のようなメカニズムに関する内容が直接的に役立つことは少ないかもしれませんが、たとえば自分の状態・状況を理解しようとする時や治療を選択する際に参考になることはあるかもしれません。

 実際、精神医療や心理の領域で『これをすれば良くなる』というのはなかなか難しく、人によって効果が異なることも多いですし、向き不向き、相性といった問題もあるため、試してみないとわからないという現実もあります。

 ただ、存在するあらゆる方法を試してみるというのは時間的にも経済的にも現実的ではありません。自分がどうしたらいいか迷ってしまった時には、症状や治療に関するメカニズムを知って自分と関連付けて考えることで、自分がどうしたらいいかのヒントになることがあるのではないかと思います。

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「文責:川上義之
 臨床心理士、公認心理師。病院や福祉施設、学校などいくつかの職場での勤務経験があり、心理療法やデイケアの運営、生活支援などの業務を行っていました。2019年に新宿四谷心理カウンセリングルームを開設、現在は相談室でのカウンセリングをメインに行っています」

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